2020年冬アニメ感想

まだ終わっていないので、今季の感想を随時追加していきます。後半はコロナの影響を受けているタイトルもあるのかもしれません(自転車操業の場合?)。

プランダラ
全体的な設定の雑さと作画含めた質の残念さが抜けています。垢抜けない動き、演出、絵作り、作画は典型的な低予算ものに見えます。雰囲気というかノリも古さを感じます。唐突で強引なセクハラ要素もプラスになっているように見えず、次クールにも期待です。2.6

はてな
アーティファクトという魔法道具をめぐるヒロイン一家のごたごたとそこに飛び込むマジシャン見習いの主人公によるドタバタラブコメです。控えめながらしっかりラッキースケベが発生するものの謎の光が活躍する系なわけでもありません。かと言って各キャラのスポット回で人物の掘り下げや魅力を出そうとしているわけでもなく、1話で華々しく出した怪盗という要素もいまいち生きているのか怪しく、絵も展開もメリハリなく進むような進まない話を見ていると、全体的に中途半端です。どことなく一昔前の空気感も醸し出していて、作画は2話で既に崩れ、残念感が全編に渡って漂っています。2.8

ARP
男性アイドルものです。謎の招待状でメンバー集合からのデビュー、各メンバースポット回、というある意味テンプレなのか、22/7と同じような展開をしていますが予算の都合か色々と苦しい部分があります。
2話にしてライブの使い回しとか不穏な空気が漂っていたりその後も素材の使い回しが多く、中盤から省エネ作画が気にならないでもないですが、ダイナミックな作画は見られなかったかなと。
この手のアイドルものや音楽ものは、バーチャルアイドル(シンガー)のようなもので、アニメはあくまでPVや愛着を持たせる道具で、関連商品や音源を売るビジネスだったりもするのでアニメの質だけではないとは言えます。コロナの影響かはわかりませんが、○.5回やら、ネタなのか製作進行がピンチなのか判断がつきにくい回など、一抹の不安を覚えるものの、ライブのCG自体は無難に出来ているし、割り切ってPV+αでファンが喜べたならそれはそれかなと。2.9

オーフェン
旧アニメは未視聴ですが、小説は昔若干読んだ記憶があります。最近キノやブギーポップなど妙に古い原作のリメイクやアニメ化が時々ありますがその1つです。元ネタの時代感が出るのは良し悪しだとは思いますが、演出が野暮ったいのはもったいないなと。もっと全体的に現代風にして主人公の声も一新しても良かったんじゃないかとも。現在と回想が同じぐらいの頻度で出てくるような見せ方も時系列がとっ散らかって見えてしまいます。案外フルメタル・パニックで言うふもっふ的な外伝のアニメ化の方が良かったんじゃないかとも思ってしまいます。3(2.9でもいいかも)

22/7
アイドルものです。主人公?が素人っぽい声の割に、美少女アニメ的な絵柄に違和感が(逆か)。だいぶ前にあった0048と共通項が多そうですが、あちらはまだ物語として見れる部分があった分、現実をモデルにしていると粗が目立って来るなと。
急に自宅にピンポイントでDMが送りつけられてきたり、壁の指示が絶対でそれに従うという怪しさに若干見ていて寒々しい感じもします。
アイドルビジネス自体の闇を思わせる感というか、その胡散臭さは出ているように思います。各メンバーのスポット回は重くしすぎな感はありますが、無難に収まっているので序盤の期待とは裏腹にやや落ち着いた感じがあります。が、ラスト2話の謎展開は何を目指しているのかなと。というか運営はストーカーかと。3

リチャード
お耽美蘊蓄日常系とでもいうのか、所々ダイナミックな気配がしないでもないですが大きな崩れはありませんでした。本筋以外の日常の話自体は人物の人となりやその機微と蘊蓄とを含んだストーリーが丁寧で悪くないと思わせます。ただ、終始耽美なテイストはあったにせよ後半急にフルアクセルになってどうしようかと。しかもラスト2話はリチャードの家関係の回を補足しつつ対応する回なのでストーリー上必要なのだとは思いますが、テンション的には若干蛇足のように感じられ、星合の続きのような展開も含めて不思議な構成に思えました。3

タマ
今季の怪作です。サンリオキャラの公式擬人化で、5分帯でも良さそうなネタに感じます。擬人化せずに作った方がいいんじゃないかとも思わないでもないですが、シュールすぎるところもあり、これはこれで面白く見えてくるのはそれはそれかなと。作画は安定していて全体的にはほっこり系ですが、基本がPVのようなネタありきの日常系なので、キャラ萌えで刺さる人以外にはやや冗長に感じられそうです。3

デンドログラム
VRMMO系です。NPCが人間のように振る舞い、実際の世界のようにやり直しができないという設定のようです。その割にプレイヤーはあくまでゲームとして参加するので、デスペナがゲーム内で3日時間が過ぎるというあくまでゲーム的なので、NPCに対する諸々シリアスな見せ方に賛否分かれているようです。ゲームと現実が区別できないぐらいのリアルな体験ができるというのは、ロールプレイをする場合に臨場感が出せて面白そうかなとは思います。まあ、メタな視点がアイテム関係やイベント関係に限られているようにも見えるので、話の展開的に異世界転生の方が説得力はありそうですが。主人公の行動原理が「後味が悪い」というのも少々変な感じもします。その辺りSAOは導入やVRMMOという設定の使い方が上手いと言うかこ慣れてるなと思います。3

防御
こちらもVRMMOものです。こちらはゲームと割り切ってメタな視点を多分に取り入れた日常ギャグ寄りのなろう系になります。主人公たちのキャラデザが可愛いく展開も緩めなので、突っ込みどころも含めてとっつきやすさがあります。ただ、主人公は防御特化で初心者ながら防御が全プレイヤー中最強で、さらについでに攻撃も最強で、ピンチになりそうになれば後出しで奥の手が次々出てきて、終始「あれまた何かやっちゃいました?」的で、一言で表すなら「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」という作品です。いわゆるカチ勢的なニッチな楽しみ方を見せるのかと最初は期待したのですが、流石にそんな地味なことはしないよなと。3

PSO2
記憶をリセットできないので初見の人の見方は想像するしかないのですが、本編の映像化と言う意味では、取捨選択やオリジナル展開での補完も含めて大きな破綻もなく割とまとまっているのではないでしょうか。ただ、どうにも作画のピークがエルダー戦だったなと。その後はルーサーもヒューナル形態にならないし、話自体は展開していく割に省エネ感が前に出てしまって、せっかくのシリアスな展開や熱そうなセリフも台無し感があったりもします(ゲーム版が良かったとも言いませんが)。最終話はさすがに綺麗な作画でしたが、主人公がいまいち活躍している印象がないのは若干モヤモヤしないでもないです。アニメ化がこの後も続くかはわかりませんが、大胆にカットした星や人物関係が影響でなければ良いのですが。因みにラストに前アニメに繋がる引きかとうっすら期待しましたがEP3内で終わらせています(実写含め蒼井翔太は出てきません)。3.1

虚構
人物の特性や序盤の展開から妖怪もののバトル系を予感させましたが、話が進んでいくとタイトル通りの(屁)理屈合戦による推理もの?でした。理屈のための理屈をぶつけ合う感じで、虚構で相手を納得させるということで一貫しているのは突っ込みどころも多そうですが面白いです。ああ言えばこう言う感じというか、ある種カウンセリングやネゴシエーションのようにも見えてきたりも。
前半のやけに細かい蛇やら、レクリエイターズでも見たようなネット上の集合意識による亡霊やら、対象のバリエーションが幅広いというか、登場人物の設定が生きているのかいないのか判断がつきかねるのは良し悪しだなと。1つの話あたりにかける話数が多く、最終話が丸々余韻なのもあって、トータルでのエピソードが少なくやや冗長に見えるので余計にそう感じるのかもしれません。3.5

ダーウィン
東京を舞台にした能力デスゲーム系です。招待制のスマホのアプリを起動したら能力バトル参加という謎技術にふと王様ゲームの名前が頭をよぎります。主人公の能力は不明→新種というセオリー通りな上、トレースオン的などこかで見たようなもので、当初は微妙な方で突き抜けるかと思わせました。が、予想に反してその後仲間を増やしたり作戦を立てたり王道感も出しつつ、見せ方としても全編緊張感が続き、能力戦もあって先が読めない面白さがありました。3.5

シートン
最近は毎期ある獣ものです。学園ドタバタコメディですが、男子は動物顔、女子はケモミミという非対称性が特徴です。動物知識を紛れ込ませながら異種族交流を前面に出したと言う意味では、某サファリパークに通ずるものがあります。主人公の多種族に対する口の悪さはやや好き嫌い分かれそうですが、全体的にギャグ寄りでキレもいいので安心して楽しめる作品です。ヒロインの声に最初違和感がありましたが、聞いているうちに癖になっていて、エンディングもかわいいなと。ところで、この作品のハイエナとかダーウィンの蠱毒とか毎期何かしらのネタ被りが生じるの何なんでしょう。3.5

ランウェイ
モデルとしては身長が低い少女とデザイナーになるにはお金がない少年によるダブル主人公のお話で、少女漫画的な話に思わせてその実少年漫画的な熱さもあります。ファッション的なことは分からない視点で見ていますが、短い話数でも紆余曲折を経て着実に目的に向かって進むよう計画的に話を組み立てている印象です。作中で主人公が評価を受ける作品の見本といえばグルメ系だと思うのですが、審査員の評価がどことなくそのテイストを感じさせて、工夫した箇所の説明やリアクションに面白味があります。ただ、全体の流れを重視した結果、やや展開やキャラの動き方がシナリオの都合で動いているように感じられます。12話という尺ではイベントの数に対して掘り下げや細かい描写が不足して、結果ありきで進んでいる感が強いのが気になるというか、終盤の持って行き方は若干もやっとします。いろいろ書いていますが、感覚的で難しそうなモチーフを調理する一端が見れたのは興味深く面白かったです。3.5

ソマリ
ラピュタのロボットかなと。ファンタジーの醍醐味の一つは現実に存在しない世界観の提示にあると思いますが、その表現が美しいです。プラメモや少女世紀末旅行的な変えられない結末に向けてどのように過ごすか系にも見えますが、厳しい現実に向き合いつつも親子や種族関係を問いかける中で、かけがえのないものを見出そうとするハートフルさを持ちます。とはいえ、作中で人間は醜く弱い部分のみが描かれている(ソマリは人間社会で生きていないからいい子)ことや、ゴーレムは異形に入らないのかとか気にならないではないです。子供と老人(人外ですが)などの要素やキャスト、主題歌、絵作りや泣き要素等々自分には少々狙いすぎているようにも見えてしまいました(穿った見方でしょうが)。あと関係ないですが、ソマリと聞くと大昔の海賊ゲーを真っ先に思い出してしまいました。3.6

空挺ドラゴンズ
ラピュタやラストエグザイルに影響を受けてそうな、空の船乗り系にモンハンを足したような作品です。内容としては空中で遭遇する巨大なドラゴンを狩って売ることを生業としているオロチトリの仕事やキャラのドラマを垣間見せます。よく言われるように描写的には捕鯨を意識しているように見えます。メインのストーリーや構成がそれほど強くないため、目的に向かって進むと言うよりはその場その場でイベントが展開される感じがします。話自体にはツッコミどころが気になりますが、世界観に浸れる雰囲気系としては面白いです。登場人物は多いものの、キャラも立っていて、ポリピクの作る絵作りも綺麗で、どこかジブリ臭もするトゥーンシェードの3Dも悪くないなと。ただ、主役級のミカにもう少し魅力があると良かったのですが。3.8

理系
昨年のかぐや様のようにお互い好き同士が否定しながらいちゃつく系のラブコメです。万事理系的な思考をせずにはいられないキャラを通して見せることで、恋愛感情を数字や理屈を使って大真面目に説明しようとするのが斬新で面白いです。4

イド
他人の殺意にダイブするという設定の奇抜さと見せ方が面白い作品です。殺意の残留思念で世界観が構成されるほどの情報量があるのかとか気にならないではないですが、こういう実験的で尖った作品は好みです。イドの中のイドや夢とイドとの関係や、事の発端となっているカエルちゃんの謎やら色々考えさせるのも世界観に合っています。4.1

レビュアーズ
いろんな意味でチャレンジャーな作品です。地上波を途中で拒否されたようで、ネット配信での視聴となります。異世界の性風俗という、異世界ものでそれまでありそうでなかった要素をそれだけ抜き出したアイデアの勝利だと思います。ブレずにネタに全力なのがいいなと。4.1

推し武道
アイドルものといえばアイドル自身が主人公でアニメはキャラへの愛着やそのPVのような位置付けなことがほとんどですが、この作品はファンにフォーカスを当てているのが面白いです。岡山の地下アイドルを追いかけるドルオタが、荒唐無稽とも言える偏愛によって貢ぐ様をコメディ色強く描いています。一方でアイドル側のドラマも適度に入っていて、人と人の関係でアイドルもできていると言うことを思わせます。また、身近なアイドルを売り出すようになって以降の握手券(CD)の大量買いによる買い支え、繰り返される展開の中で関係の変化やイベントが変わったり、目標に向けて進んでいる様子は微笑ましくもなります。価値観はそれぞれだなとか、色んな意味でキレてて突っ込みどころしかなかったりもしますが、テンションや勢いって大事だなと。4.2

今季現時点で見ている範囲では、意表をつくような変化球の作品が面白かったシーズンでした。
今後コロナの影響がアニメ業界にも色々迫ってきそうです。とはいえ、現状タイトルが多すぎる感もあるので、これを機に新規の数を減らしたり隔週にでもして全体に余裕を持たせて、円盤を買いたくなるような質の向上を目指しても良いんじゃないかなと。それこそサブカルをクールジャパンと称するのなら、効果があるかわからないお笑いやら海外拠点での展開とかを削ればいくらでも予算に余裕は出るでしょうし、国内の制作会社に国費を注いででも国内回帰した方がよほど対外的に効果があるんじゃないでしょうか。製作委員会方式がリスクヘッジの反面、無理に数作って好事家を喜ばせるB級アニメを量産する温床になってもいそうですし。いずれにしても、質アニメが増えるためには中抜き側ではなくクリエイター側にきちんと還元されるような仕組みづくりが国家ぐるみで必要に思えます。ついでに、再放送を増やす流れもあろうかと思いますが、過去の作品も制作側に還元されるといいのですが。