MOMENTUM Wireless3

9月末に発売されたゼンハイザーの通称(愛称?)「木綿」と呼ばれているシリーズのヘッドホン3世代目です。HD4.5BTNCを所持していますが、もう一声音質の良い外出用ヘッドホンが欲しいと思っていて、SONYのWH1000XM3を検討していましたが、丁度タイムリーだったのでこちらを購入しました。(WFを買った時と逆の現象が・・・)2ヶ月聞いてさらに少し更新しました。

基本情報

新開発の42mmドライバを持つ密閉型ヘッドホンでBT接続のワイヤレス、NCもあります。バッテリーの持続時間は17時間と現行機種としては持たない方です。30時間ぐらい持つと良かったのですが。
見た目は従来のMOMENTUMを踏襲していますが、より飾り気がなくなったというかニュートラルになった印象です。見た目は前のままのレトロ感を押し出した方向が洒落てて良かったかなとも思います。イヤーパッドとヘッドバンドにはシープスキンが使用されていてすべすべして柔らかく、装着した感触も良く高級感もあります。本体右側後方に物理ボタンがあり、音量操作ボタン、再生/停止/送り/戻しを兼ねたボタン、NCありなしと外音取り込みを選択できるスライドスイッチがついています。やはり物理ボタンは安心感があります。本体重量は305gと外使い用としては重めです。後述しますがこれがじわじわ来ます。充電等の端子はUSBCで満充電までは3時間です。

音とか感想

第一印象は柔らかく艶感のある面白い音だと思っていましたが、使っている間に音が締まってきてやや硬質(特に高音)な感じになってきて、これはこれで面白いなと。情報量も多く霧状に音が満ちている感はありますが、音の分離が良くそれぞれの音を聞き分けられます。バランスとしてはピラミッド型とドンシャリの中間というか、高音はほどほどで中音が相対的に薄目で低音が厚い感じです。いずれにしても普及価格帯のゼンハイザーの例に漏れず低音多めです。手持ちの機種ではHD660S(YAXI装着状態)と598を足して割ったような方向というか、今は手元にないHD650と比較しても面白そうです(その後HD650実機と比べたら全くの別物でした)。聞き比べると改めてHD660Sはそれぞれの音が密度高く均質で素直に鳴っていて上質かつ安定感があります。

当初はまったり系でしたが、使い込む間にキレが出て明瞭さが増してきたので、高速の激しい曲やHR/HMやエッジの立った電子音もいけるようになって来ました(これはHD4.5やHD598とは異なります)。それなりに派手さもありジャンルもさほど選ばないと思われます。BTで聞けることを思えば解像感も悪くないと思います。キラキラした透明感やモニター的な原音再現を求める場合には違和感があるかもしれません。ヘッドホンは使っている間に音が変化することが多いので、出来るだけ安定してからレビューしようとは思うものの、MOMENTUM3も例外ではなかったようです。

高音
当初はソフトで量も少な目で刺さる事もありませんでしたが、使い続けていたらややエッジが出て固めでパキッとした印象になりました。量もそれなりに出て来たことで、曲によっては耳につくこともありますがキレキレというほどでも刺さるほどでもありません。聞き込む内に中音の主張も前に出てきたのでバランスは悪くないと感じます。

低音
厚みや張りがあってアタック感が強く、低音のレンジの広さから沈み込むような低音表現もあり豊かです。最近は低音をタイトにエッジ感を出した明瞭な鳴らし方が流行りでしたが、ボワつく一歩手前程度に残響が多目です。圧の強さの割にエッジや芯が捉えにくいので人によってはゆるい低音だと感じそうですが、点ではなく面として低音が包み込む迫力があります。時間とともに締まりはするものの、柔らかさから来る艶感もあるので最近聞いたヘッドホンではあまりなかったバランスです。EDM系等の電子音では低音が支配的になる音源も多いので、もたれると感じる人もいるかもしれません。

空間
音場の広さは中ぐらい(599と同程度)ですが、滑らかに音が広がります。密閉型ですが狭くはなくHD598CSのように左右に壁のように感じることもありません。むしろ広がる方向で空間の配置が特徴的です。音の分離は良い方だと思います。音が固まりにならず立体的な定位を持っています。少し演出的な感じもしますが、HD700も800Sも演出的な空間とも言えるので、これはこれで面白い鳴り方だと思います。音の鳴らし方やバランスは素直な鳴り方が多かったゼンハイザーにしては若干癖がありますが、心地よい雰囲気重視とも言えます。

NC
通勤電車やつけたまま色々な場所に行きましたが必要十分に思われます。低音の雑音は一層されHD4.5より効き具合も良さそうです。とはいえ他社と比べると特別優れているということもなさそうで、NC重視であればSONYやBOSEの方が良いと思われます。接続はHD4.5BTNCと比べると安定しており、普段使いで困る事もありませんでしたが、不安定になると相変わらずザザザザと激しいノイズ音がします。混雑する街中ではまだ使っていないのでその辺りは追って。

まとめ

全体的にはこの価格帯のゼンハイザーらしいウォーム系でマイルドさもありつつ、やや演出的なメリハリもあり派出さもあるので、多くの人に受け入れられる音を鳴らすヘッドホンだと思います。その上でNCが付いており、ゼンハイザーの自信が伺える出来です(レビュアーに提供して宣伝しているという話もありますし)。実売5万弱と安くはないですが音質も機能面も後悔はしない出来というか、外部アンプ無しでこれだけ鳴らせれば音の満足度は高めだと思います。出た時期に対してバッテリーの持ちが短めなのも、電力を内蔵アンプの動力として使っていると考えれば納得がいきます。ポタアン+有線を使うのは外では確かにスマートじゃないし、再生機器のアンプを強化するのもバッテリー持ちと携帯性から限界がありますし。恐らく次の展開としては、Aptx HDやその他高音質コーデックへの対応機種なども出てくると思いますが、ヘッドホンがさらに重くなりすぎないと良いなと。

当初は1枚ベールを挟んだ感のある音にも思えましたが次第に明瞭さが出(抜けが良いとは言えないものの)、臨場感のある空間とパンチの効いた低音もあって充実感のある音を鳴らします。他社には似た傾向のヘッドホンもあるだろうと思いますが、ゼンハイザーでは似た傾向を持ったものが見当たらず新鮮です。同価格帯で低音多めのHD660Sと比べると、平滑でマットなHD660Sに対して、木綿は光沢感のあるエナメル質に覆われているような硬さと艶感がありながら、どこかムーディな雰囲気重視で、音質はともかく木綿の方が聞いていて情感もあり面白いです。追記です。ファームウェア3.1.5に上げたところ、若干音に変化があったように感じられます。それまで包み込むような重厚さの反面声がやや遠かったのですが、イコライザーの基準点が調整されたのか、声が気持ち前面に出てくるように明瞭さが向上した印象です。音のバランスが良くなった代わりに全体的に硬さが出たことで、曲によって中音が若干上ずったような違和感がなくもないです。気のせいかもしれませんが。

外で使う場合には電車内や街中でもリスニングに不便がない程度に使えますが、真価を発揮するのは人が少なめの屋内やカフェや公園などの落ち着いて音楽に集中できる環境だと思いました。家で使うにもゆったりリスニング出来ると思います。1台で外出時も部屋でも全て済ませる場合には経済的かもしれません。

ただ、個人的に唯一気になる点として、ヘッドバンドの負荷分散が上手く行かないのか、重さもあり1時間を過ぎると頭頂部がじわじわ痛くなってきます。1ヶ月使って来て大分慣れて来ましたが、それでもまだ長時間の使用ではポジションを何度も調整しています。クッションの形や質感なのか頭に接する面積か、時間とともに緩和する問題でも無さそうな感じがします。とりあえずはバンドを長めに調整してヘッドバンドにかかる重さを耳に分散するようにしています。部屋使いのヘッドホンではHD700が290g、800Sは370gですがいずれも長時間の使用でも痛くなく、上手く重さが分散されて実際の重さよりも軽く感じる辺り、本機は心地よく聞ける音質に対してヘッドバンドの装着感が硬い感じがしてしまいます。どの道家では別のヘッドホンを使うので、外使いに限定すれば問題のない範囲ではあるのですが。

シープスキンのレザーは高級感があり肌触りも良い反面、雑に扱うとすぐにボロボロになりそうで(普段ヘッドホンは鞄に直で放り込むので1週間で既に傷多数)、気を使いそうです。専用ケースも付属しており質もよさげですが、かなり大きく鞄インするにはちょっと嵩張る・・・。

因みにアプリを使用してイコライザー等の調整ができますが、周波数帯ごとに調整するのではなくざっくりとしか調整できないため、過度の期待はしないほうがいいかもしれません。そういえばNC機ではAirPodsProも気になっていますが、自分的にイヤホンは夏用なので来年iPhoneにするかなぁと。MacとiPadを使っていながら携帯だけは何故かずっとAndroidという・・・。

公式サイト

https://www.sennheiser.co.jp/sen.user.Item/id/1360.html