MOMENTUM True Wireless 2

連休前に確保した木綿TW2(白)が届きました。色については白の見た目は悪くないのですが、製品特性を考えると指でつまむ+耳に入れる関係で白は汚れが目立ちそうで、黒が買えると良かったなと。ケースはヘッドホンの木綿3と同様のファブリックで洒落ています。が、これも若干汚れに気を使いそうです。記事にした時点で1週間、追記時点で2週間、その後購入から1年近く使い続けた所感も追記しました。

概要

Momentum True Wireless2は国内では4/16に発売されたゼンハイザーのTWS:完全ワイヤレスNCイヤホンです。発売から一足遅れて無事入手できました。サイト内の記事の傾向から明らかにゼンハイザー派の自分としては本命の完全ワイヤレスのNCイヤホンとなります。

本機を一言で表すなら「いい音の出る耳栓」です。
再生時間は公称本体7時間、ケースが21時間分、合計28時間となっています。この辺りは前作Momentum True Wirelessのバッテリー関係が残念で、自然放電がやたらに早かったらしいのも克服しているようで、次にきっちり生かしています。Android機でAptX接続、NC、EQなしで100%状態で接続時間についても実測したところ、4時間15分でした。その前にEQありで測った時も4時間強だったので、思ったよりもたない印象だったのは実際のようでした。それでも前作と比べれば向上してはいるようですが、公称値はAACの場合のようで、AptXでは思ったよりも持たないようです。

装着感は個人的には良好です。XM3もねじ込むのにポジション調整が慣れるまで手間でしたが、こちらは同じかそれ以上にポジション調整をしている気がします。
耳にイヤピースをさした時点で一度密閉され、その後さらに押し込むと一度密閉が解け、更に押し込んで本体裏側全体が耳に接するようにすると再度密閉されます。ねじりながら押し込む際、本体裏側が耳に接するように深く刺さるとしっかり固定されて落ちたりズレることはなさそうですが、これだとアクティブとパッシブのバランスが極端にパッシブによるので本来の使い方ではないようです。若干の不安はありますが、ゼンハイザーのロゴが水平の状態で最初に密閉されたところで止めるのが良さそうです。置くまで入りすぎる場合にはイヤピースのサイズを調整するなどするとアクティブもしっかり効きます。

ケースはヘッドホンの木綿3と同様のファブリックで洒落ています。が、これも汚しそうだなと心配になります。
最近では当たり前になりつつあるTWSの調整が可能なアプリが出ており、ファームウェアによる本体仕様の更新や、イコライザーや後述の操作設定ができます。イコライザーは相変わらず周波数帯のバンドを調整するのではなく、大雑把な曲線操作による調整しかできません。ここは普通のイコライザーに是非更新して欲しいと思うところです。

操作は本体の背部分を1から3タップと長押しを左右それぞれ、合計8つの操作に対応しています。キーコンフィグができるので、再生コントロール、外音コントロールなどをある程度自由に設定できます(音量調整は左右の長押しのみ)。また、再生コントロールのデフォルトが左側のためソニーと逆で、XM3に慣れたのとヘッドホンの木綿3のコントロールも右側なので、自分は再生コントロールを右側に移し、左に1タップ外音切り替え、2タップNC切替、というように変更しました。
→その後のアプデでの変更だと思われるのですが、外音コントロールと再生コントロールを同じ側に混在できるのと、同じアクションを左右に振れるようになっています。購入時に、再生停止の代わりに外音取り込みが使えないかと試して断念した記憶があるので。試しに右1タップ外音取り込み、左1タップNC切り替え、2タップ3タップは左右ともに早送り巻き戻しとしてみました。(外音取り込み時は再生停止)

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ノイズキャンセリング/外音取り込み

巷で言われているように、パッシブ(耳栓としての効き具合)の遮音性が強目で、NCをつけても意外と変化は少ないです。とはいえ低音のノイズはしっかり消えます。通勤にも使ってみましたが、NCの効き具合のわりに音楽もよく聞こえ、音楽を流していれば走行音もさほど気にならなかったです。中低音にボリュームがあり、音が満ちていることも関係しているのかもしれません。同時に、アナウンスも他機種より聞き落としやすいので、外音取り込みを適宜使うのが良さそうです。→その後使い続けていますが、自分の装着の仕方の影響かファームウェアによるのか、NCを切って使うことが増えました。NCを入れると耳栓感は薄れるのですが、電車の走行音の高い部分をよく拾うように鳴ってしまい、結局オフにするのが一番遮音性が高いという逆転現象?が起きています。

外音取り込みは手持ちではAirPodsProに近く比較的自然で大きさも丁度いいので、アナウンスの聞き取りや街歩きなどでは使いやすいです。ただ、つけたまま会話や店に入るには若干の抵抗感を覚えるというのが正直なところです。

通話時のマイクの性能が低いという話もありますが、TWSでは普段通話をしないのであまり気にしていませんでしたが、昨今のテレワークやビデオ会議需要などでTWSは手軽に無線ヘッドセットがわりになるデバイスすので、この項目を重視し、それ以外の時間は音楽を聴くという使い方もわかります。アップデートで若干の向上は見られたようですが、他機種の方がこの辺りは一枚上手のようです。

とはいえ、ゼンハイザーを選ぶ時点で音質を求めているように思えるというか、イヤホンはそもそも音楽を聴くための機械なので、その機能に全振りしているのもひとつの正しい姿だと思います。もちろん、あらゆる性能が高いに越したことはないですし、一方で日常的に使用する道具としてのベクトルに振っているAirPodsProとも差別化されていると思います。

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音の感想

7mmドライバは前作と同じく同社の上位イヤホンと同型のようです(イヤホンは詳しくないので良くは知らないのですが)。音の第一印象はイヤホンにしては音像が大きいなと。滑らかさや柔らかさから来る上品な音を鳴らします。それなりに輪郭が追える明瞭さはありますが、残響が強めで柔らかくどんな曲でもソフトフォーカスになります。メーカーとシリーズが同じだけあって当初はMomentum3と同系統の音に感じましたが、MW3はその後のアプデや鳴らし込みで明瞭さが増したので、両者の音の傾向は案外と違いがでてきました。
アプデもいくつか経た後は音場が広く、音の情報量も多目で滑らかに鳴らしています。

バランスとしてはかまぼこ型に近いピラミッド型でしょうか。低音はボリューム感もあり豊かです。
高音:柔らかく控えめでロックはボーカルがやや埋もれがちです。
低音:柔らかく残響成分が多くボワつき気味です。張りはあるものの点ではなく面で鳴らす感があります。量もそれなりにあり低いところまで出るので、曲によっては迫力があります。
高低共に使い込んでいく間に多少でも引き締まることに期待でしょうか。
→その後、2週間時点で、若干エッジ感が出てきて臨場感や立体感が出てきたように感じます。聞き分けられるようになった耳エージングかもしれませんが。
→その後アプデで4.7.0になりました。若干埋もれ感が薄れた気がしますが、直前までEQをいじっていたので気のせいかもしれません。というかアプデしても結局EQに頼ります。EQで高音を上げていると普通の高音を超えてごく高音のシャリつきが強くなった気がします。また、アプリの接続が非アクティブで切れなくなっていました。

Momentum3と比較をすると、高音と低音を控えめにした感じというか、誤解を恐れずに言ってしまえば全体的に残響成分の多い風呂場サウンドです。当初はもやっとしながら広かったのですが、使い込みかアプデによってか、ある程度締りが出てしっとり広がる自然な空間を持ちます。
ヘッドホンでは低音が過多気味だったり、高音が固かったりするところが若干抑えられているので、好みが分かれそうなところではあります。

どこかベールのような曇りを感じる抜けきらない空間でありながら、ゆったりと広さがあるため、ずっと聞いていられそうな没入感のあるウォームな音を鳴らします。ただ、個人的にはXM3でもイコライザで中高音を少し上げていたので、木綿はもう少し明瞭さが欲しいかなと思いました。ボーカルもリズム系も全体的にモヤがかかってやや埋もれるので、ゆったりした曲に向いた機種という印象です。自分は気になるので、とりあえず気分や曲で選べるようにイコライザーをいじりました。
・中高寄り:中心から大きく右に動かして少し上に上げたぐらいの右上がりの線
・ドンシャリ寄り:1/3から半分ぐらい右、半分ぐらい上のU字の線
を作ってプリセットに入れてます。中高寄りはさっぱりした音にしたい時用(適当)。ドンシャリ寄りの方は眠たげだった音から一気に元気が出て、ポップスやロックや電子音の楽しさが向上し個人的にはありかなという気もしています(ヘッドホンの木綿3の雰囲気に近づいたような)。というかEQ使いづらいです。→その後のアプデで3バンド制のEQも追加されました。周波数帯はもう少し細かく設定できればとは思うものの、わかりやすい設定になったと思います。(因みに、その後もずっとMTW2はドンシャリよりのEQを使用し続けています)

左側は抜けが良くなり爽快感が増すので普段使用しています。右は参考。

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他の機種との比較

現在手持ちのWF-1000XM3、AirPodsPro、木綿TW2で比較します。
同じNC付きのTWSですがコンセプトが違う機種だとは思うので一長一短はそれぞれにある印象です。まず音以外の部分の比較です。

ケース、本体サイズ
小さい←AirPodsProーー木綿ーーXM3→大きい
これは見たままです。取り回しに影響するところなので、なくしやすさとのトレードオフにもなりそうですが、小さいに越したことはありません。

パッシブ(耳栓)とアクティブNCによるバランス
アクティブ強い←AirPodsProーーXM3ーー木綿→パッシブ強い
AirPodsProは普通のイヤホンの延長の装着感です。XM3は普段イヤホンをしない人間には最初に装着したときに、耳に常に何かがある感が強かったのですが、次第になれました。で、木綿TW2は慣れた状態でもそれ以上に耳に常に何かがある感があります。また、クアルコムのNCの限界もあるのかもしれませんが、ゼンハイザーの方向性からも、NCが音楽へ影響を与えないようにこのバランスになっているのかもしれません。結局は慣れなので、木綿の装着感も嫌ではないです。

接続性
途切れない←AirPodsProーー木綿ーーXM3→途切れる・繋がりにくい
出た時期の問題もありますが、最初はXM3でも十分だと思っていましたが、混雑時の途切れが頻発したり初期接続が甘いこと度々あり、個体差かもしれませんが道具としての快適性は一段落ちる印象です。ただ、木綿TW2は思わぬところで急に途切れることがあります。

WF-1000XM3との比較

音:完全ワイヤレスNCイヤホンの火付け役とも言えるSonyの機種です。DSEE HXの有無で若干違いがありますが、あり前提で書いていきます。
当初は高音が柔らかくピラミッド型で低音が固めという事を書きましたが、比べるとXM3の方がタイトで輪郭が立っていてメリハリがありボーカルも埋もれないので取っ付き易い音です。比較すると木綿TW2の音はボーカルがやや埋もれて曇って感じられる一方で、全体の音像が大きく解像感や空間内に溢れる情報量が多く音に余裕を感じます。

NC:NCの効きは自体はXM3の方が強いと思います。ただ、耳栓の強さもあって木綿TW2も騒音に対する遮音性は負けていないと思います。

その他:XM3は接続が甘くなることやケースから出してきちんと反応しないことがあるなど、今の目で見れば若干ストレスが生じるため道具としての完成度は今ひとつだと思います。ただ、音とNCのトータルでのバランスは今でもXM3は悪くない機種だと思います。イコライザも細かく設定出来、明瞭に鳴らすので電子音系を聞くなら自分はXM3が良いかなと思います。POPSとも相性がいいと思います。

AirPodsProとの比較

昨年発売されたTWS中で評判が良く気になっていたところ、丁度iPhoneSE2が発売されると知り購入しました。特筆すべきはNCの効きと外音取り込みに加え、取り回しのしやすいサイズや通話の質の高さなど、日常的に使うツールとしての使い勝手の良さです。
音:音全振りの木綿と使い勝手重視のAirPodsProは得意な項目がそれぞれに違っていますが、音質で言うならば木綿の方が優れています。AirPodsも音楽を聴くのに不便はありませんが、どこか没入感が物足りないというか、ながら作業に向いた音と言えそうです。とはいえ、iPhoneユーザーで完全ワイヤレスでノイキャンが欲しいという人はとりあえずAirPodsProを買ってみるのが良いんじゃないでしょうか。

NC:AirPodsProのNCは強力で、ONにすると耳が圧迫される感覚が強いです。

その他:外音取り込みはすでに極まっている感があります。非常に自然で、イヤホンをしたまま日常生活が送れそうです。
ただ、自分は個人的に形が合わず、しばらくすると押し出されて抜けてきます。右は確実に。つけて出歩くと落としそうでヒヤヒヤします。昔からカナル型じゃないイヤホンも小径でないと耳が痛くなってしまう(それもあってヘッドホン派なのですが)ので、基本形状がイヤホンを踏襲しているAirPodsProも形とサイズの相性が合わないのが残念です。その後シリコンカバーで抵抗感を増してある程度解決はしましたが、今度はつけたままケースに入らないという悩みが・・・。

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おわりに

XM3は画期的な商品だと思いましたが、約1年の間に(クアルコムの技術もあって)様々な商品が雨後の筍のごとく出てきましたが、その後発売された木綿TW2はずっと聞いていられる音質(EQ調整は必要かもしれませんが)を中心に完成度が高い印象です。

さすがにヘッドホンを開いて装着すれば音楽開始というストレスフリーな木綿3(完全に気を抜いていると物理的に噛まれることがあります)や、ケースも本体も小さく、ねじ込む手間も最小限なAirPodsProと比べると、装着して音楽を聴くまでに必要な儀式は若干ありますが、音楽体験を思えばさほど気にならないレベルだと思います。

もしこの音が気に入ったのであれば、ヘッドホンの木綿3もお勧めします(最近発売された白は2のアイボリーとは違う方向で落ち着いて洒落て見えます)。イヤホンと比べると音場の広さや柔らかさはMTW2の方があるため、案外印象は違って聞こえたりもしますが、MTW2がモヤッと感じたりイコライザーでメリハリを出していた人にとっては、高音の明瞭さも音の分離も低音の圧も量も満遍なく向上します。低音がイヤホン以上に重くブーミー感はありますが、イコライザーで若干は調整できます。
木綿系の音はこれはこれで癖になるものの、個人的には音像の大きさ、広さ、解像感は良いと思うのですが、残響感があってももう少しシャキッと輪郭が立って音が分離して(特に中高音の)抜けが良い音だと良いなとは思います。

2週間時点の結論としては、現在のNCイヤホンは高音質と言っても価格に対して有線/無線ヘッドホンを差し置いていい音で聴けるという類ではありません。その意味で期待しすぎると肩透かしを喰らうかもしれません。とはいえ、今回比較した機種の中では情報量も多く解像感も高いので、音質が高いという触れ込みに偽りはないと思います。とはいえ、完璧なわけではなく他機種も同様にそれぞれ特徴があるので、自分の優先項目に合わせた商品を購入するのが良いと思います。

また、この手のイヤホンは本体が軽く手軽に持ち運びが出来て騒音下でも音楽を聴ける道具や無線ヘッドセットとしても便利なので、特にこれから暑い季節になるのもあって、今後も活躍するデバイスだと思います。XM3でNCイヤホンでリスニングに耐える音質で、そこからさらに心地よさが向上した音質なので、移動中や出先でのリスニングとしては必要十分というか、これ以上は好みの差が大きくなりそうです。あるいは、AirPodsPro以上のNCと木綿TW2以上の音質が同居するなどの技術の発達を待つ必要がありそうです。

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MOMENTUM Wireless3 レビュー

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公式サイト
https://ja-jp.sennheiser.com/momentumtruewireless-2