GRADO SR325e

前々からいつか買おうと思っていたメーカーであるGRADOですが、HD25のカスタムに触発されてロックが気持ちよく聞けるヘッドホンが欲しいという思いがつのり、ついに購入しました。最初に買うモデルとしてはやはりこれかなと。

概要

SR325はGRADOといえばこれを聞けと言われることの多い開放型のヘッドホンです。末尾につくアルファベットや時期によってドライバが異なるようで、それが音への影響もあるらしく、以前の無印やiなどの頃よりもeは若干落ち着いたという話もあります。

開封してまず笑ってしまったのが、グラド独自のシステムを解説した(側圧の調整はヘッドバンドの中の鉄板を手で曲げろという指示とかが書かれています)説明書です。大雑把な仕様に清々しさも覚えて好印象です。

オンイヤーのイヤパッドは低音を増幅することも反響させることもなく、ざらざらした硬めのスポンジのようで装着感もさほど良くはなく、耳に乗せた感じ夏場は若干蒸れそうです。また装着した時の感触が耳に乗っているだけで気密性がなく、低音がちゃんと聞こえるのかと心配にもなりますが、音を聞くとこのイヤパッドでなくてはならないのだと思わされます。因みに開け放たれたヘッドホンの開口部からは盛大に音漏れします。

・・・

音の感想

本機を一言で表すなら「爽快なヘッドホン」です。(語彙力・・・)

音のバランスとしては高音寄りの弱ドンシャリで、パワーのないアンプを使うとシャリ付きが全面に出て中低音に不安を感じるかもしれません。高音を中心にキレが良いと感じるものの、中低音は気持ちゆるさもあるように感じます。音の分離感や立体感、滑らかさなどの点で解像感がそれほど高いという印象は受けないのですが、大雑把に見えて繊細なニュアンスを表現するのが上手い機種だなと。全体的な出音がHD25のケーブルをめちゃくちゃ良くして開放型にしたら雰囲気が近そうというか(音がタイトで近いと言いたいだけ)。ギターの鳴り方、ボーカル、高音系がHD25よりも爽快で、縦ノリ系じゃないミドルテンポの地味目なロックでも不思議と勢いやノリが出てきてテンションが上がってきて気持ち良くなってきます。これは濃い愛好家がつく訳だなと。また、ロック特化のように見えて、意外と低音も出るので電子音も気持ちよく聞けます。

手持ちで似たドライな高音の出るHD700と比較すると、どちらも高音の尖り具合や質感は似ていますが、HD700は自分としては全域キレがいいと思っていましたが、中低音に膨らみというか音の留まる空間があり、ここはSR325を聞いた後だとモヤっとすら感じます。その代わり、若干箱的ながら空間の広さと定位を持ちます。一方でSR325はもっとダイレクトに近いところで鳴らして外に抜けさせる関係か、音が宙に浮いているような感覚がありますが、音場に箱感や狭さは感じさせません。

両者は反響させた音を盛大に外に逃し、それが内側へ強く影響する点は共通しています(ヘッドホンを両手で覆うと音が大きく変わります)。ドライバを近いところに置いてその外側で反響させるか、ドライバを遠いところに置いてイヤカップ内で反響させるかの違いが音の性質に違いを与えているようです。

SR325eは耳に近いところで鳴っている機種特有の出音を持つものの、その音が周囲に抜けて広がるため、鳴り方はタイトなのに残響が広がっていく独特な浮遊感のある鳴り方と爽快で臨場感のある空間の表現を持ちます。

・・・

アンプの相性

手持ちのアンプで試した印象を書いていきます。

HA-1A MK2(UD505から出力)>DA310USB>UD505直
という印象です。中低音を膨らませるアンプと相性が良さそうです。

HA-1A MK2に繋ぐと厚みとパワーのある低音と空間が補われて、パワフル且つ抜けが良くこの機種でしか聴けない陶酔的な音が楽しめています。ホワイトノイズが乗るのはしょうがないのかもしれませんが。左右の口は傾向が異なりますが好みで選べます。左は若干スッキリしたドンシャリ寄りで元気がありますがノイズが強めに乗ります。右側は全体的にマイルドな暖かさがあり、真空管の情感が強く心地よいと感じます。ハイレゾの最新の曲でもどこかノスタルジーを感じさせるような鳴り方です。ノイズが結構大きめに乗るのだけが惜しいです。

DA310USBは程々に低音もあり硬さのある現代的な鳴らし方をして「ほどほどに丁度良い」です。当初はゲインをHighにすると高音が暴れすぎる感覚がありましたが、高音がある程度落ち着いてからはUA3での滑らかさとノイズ感のなさとの相性も良さそうです。最近では専らPS4用のアンプになっていましたが、久しぶりにリスニング用に活躍しています。勿論、もっと相性の良いアンプは色々とありそうというか、このノイズのないカチッとした方向でもっと厚みがあってパワーのあるアンプがあると良いなとも思います。

因みに、UD505直では当初は高音寄りすぎて若干の辛さもありましたが、慣れてくると高音よりでシャープな中に滑らかさというか落ち着きも感じます。ただ、もっと低音の厚みとパワー感が欲しいと思えてしまいます。あと、他のヘッドホンでは感じなかったのですが、配線の都合もあるのかSR325eでは微妙にノイズ感があるような。

・・・

おわりに

紳士御用達とも呼ばれるGRADOのヘッドホンですが、購入時はシャリ付きが強く(太いケーブルの影響もありそうですが)落ち着くまでは癖が強めです。ただ、イメージしていたものよりもずっとマイルドで聴きやすい印象だったのは末尾がeだからでしょうか。

いずれにしても、少々の暴れを補って余りある、不思議な魅力のある音を鳴らすヘッドホンです。インピーダンスが32Ωと低く、HD25のようにスマホや機器直差しですぐに気持ちよくなれるというのも魅力だろうとは思います。とはいえ、外で使うには音漏れ必至なのもありますし、それなりにパワーのある据え置きで鳴らした時に爽快かつ余裕のある味わいを発揮するのもまた魅力だと思います。

余談ですが、スカスカのスポンジのイヤーパッドを外し、試しにHD25で使用しているYAXIのイヤパッドを被せて(固定はできないので位置を合わせるだけ)装着すると物凄い勢いでボワボワした音が鳴りました。当たり前ではあるのですが、音を外へ逃すからこその抜けの良さや爽快感のある音が出るよう設計されたハウジングだと納得しました。