2019年秋アニメ感想

秋期の感想です。

・バビロン
扱うテーマ性は面白くなりそうなのですが、共通するスタッフだからか、カドっぽい女子向けな雰囲気とカドっぽい丁寧な立ち上がりからの急降下です。検察が主人公のお話ですが、序盤、謎の死を追いかけていく中で主人公の相棒が死亡、真相を掴むために事件を調べていくと一人の女、曲世愛が捜査線上に浮かぶ・・・という流れです。

サスペンスをしっかりやって行くのかと思わせておきながら、曲世はすれ違い際に声をかけただけで自殺に追い込めるという能力者で、自殺についてどう考えるかというテーマ(日本が自殺大国で、そのような結果になってしまう社会構造や心理的な原因とか、不審死を自殺にする警察とか、はたまた昔から責任の取り方として自刃があるし、つい戦前までその風習があったことと絡むわけでもなく、今更新しいテーマと呼べるほどのものでもないと思いますが)をぶん投げます。というか、むしろ序盤がミスリードで、実のところ自殺に関してはただの演出や手段でしかありません。それもあってか、曲世は囁くだけで自殺させられるにも関わらず猟奇殺人者に急にジョブチェンジします。自殺法の宣言以降に自殺者が増えているので、フェロモンと囁きだけでなく自殺薬と関わりはあるのかと思いましたがそんなこともなく。

その後世界を巻き込んで更なる茶番の挙句自殺問題が何処かに行って善悪についてのしょうもない問答(というかこれがこの作品のメインテーマだったらしい)の末、主人公が大統領を撃って終了(しかもご丁寧にその場に曲世がいる)。結果的に日本の警察出身者が大統領に取り入って立場を手に入れて、テロの様子が中継されて世界中に見られていたとなれば、国際問題どころか報復でえらいことになりそうです。そして件の女は何事もなく放たれたままという。バッドエンド自体は構わないのですが、カドと一緒で設定や状況の奇抜さで興味を引き、続く話で徐々に低空飛行、そして見事にぶん投げる様は、好事家のためのある種様式美のようにも見えました。2.9

超人高校生
異世界に転送された超人と呼ばれる様々な分野で秀でた能力を持つ7人の高校生たちが、場当たり的に現代的価値観と技術をもって綺麗事の理想論で既存の文明を壊して宗教を道具に市民革命を目指す話です。そういうジャンルとは言え諸々稚拙で突っ込むのも面倒ですが、あれだけ超人的な面をアピールするなら別に異世界である必要がなかったようにも見えるのと、なぜかマヨ成分多めです。前期のありふれた職業のように突っ込みどころはあっても絵が安定していたりもするので評価も同じぐらいでしょうか。3

アサシン
物語はヒロインの出自に関して、見守るか暗殺するという中で、家庭教師として赴任した主人公が心変わりしてヒロインを助ける方向に動く、というところから始まります。話の主軸にあるのは家柄に優れながら、その才覚がないことを蔑まれコンプレックスに思っていたヒロインが主人公によって自信を持ち変わっていくという少女の葛藤と成長です。その意味で、ダブル主人公とも言えそうです。
終盤の展開は若干よくわからない感じ(背景やシチュエーションや黒髪の言動)ですが、表現としてはもう少し独自の突き抜け方があっても良かったかなと思わないでもないです。上流階級のお嬢様のものですが、美少女系とも乙女系ともつかない印象ですし。余談ですが、家庭教師という立場でありながら、あらゆる場について行くのは若干のシュールさもあります。3

サイコパス3
1期は面白かったと記憶していますが、出来が良ければ過去作を見返そうかとも思えるのですが、今回は主人公のチートっぷりが群像劇を妨げていて、何だかシリーズを増すごとに浅くなっていっているような。社会の黒幕ネタや時事ネタを拾って絡めるのはうまくいけば良いですが、かえってチープさにも思えてしまうのはどうなんだろうなと。元々は意識高い系オサレハードボイルドだった記憶がありますが、犯罪係数やシビュラシステムのネタバラシ以降舞台や設定をうまく乗りこなせてないようにも見えてしまうというか、シリーズが進むほどに手っ取り早いグロやお耽美感が増して表面のディテールに終始してるようも感じます。まぁそもそもがSFやミステリーのネタが免罪体質とか継ぎ接ぎとかぶん投げ系だったりもするので今更かも知れませんが。続きは劇場版でということのようですが、それにしても途中でぶった切るのはどうかと。
その後1と2を見返しましたが、やはりキャラも含めて世界観の構築と、謎を解いて向き合っていく過程の1が面白く引き込まれる出来でした。2も市民代表監視官にヘイトを向ける作りが気になるのとメインキャラクター全般に物語を引っ張っていく力が弱いものの、プロット自体は後日談として世界観に合っている印象でした。それだけに3に感じた違和感は実際だったようです。3

フェアリーゴーン
後半戦です。相変わらず作画が良く線が多く崩れません。終盤にかけて主人公が主人公らしく見えるようになったのは良かったと思いますが、周囲のキャラやベロニカが最後まで決まった役割をこなすだけに見えてしまったなとも。ようやく話が動き始めてきた感はあるのですが、やはりどうも盛り上がりや作品としての魅力に欠けて見えるのは脚本によるものでしょうか。キャラに愛着が湧きにくい構成に原因もありそうですが、ベロニカが急に聞き分けが良くなったり、そもそもその2人がもっと1期の内から絡んでいればとか、主人公の事情も1期で見せてればとか、レイドーンが森を焼いて人まで殺す必要があったのかが微妙な割に正当化していたりとか、ラストバトルが世界をリセットしたい教団と神獣という何だかお約束めいた展開だったりとか、2クールあった割にプロットが割とシンプルで、やや冗長だった分を圧縮してもう少し密度感のある王道な内容や意外性を詰め込んでも行けたんじゃないかという気にもなってしまいます。3

平均値
毎度沢山ある異世界もののひとつです。往年の漫画等のネタが散りばめてあったりするようですが、ギャグとシリアス(特に命の重さの価値観)のバランス感覚が独特です。面白くないわけではないのですが。 3

・神田川
美少女と水上バイクと射撃を組み合わせた全く新しい謎競技系です。なぜわざわざ神田川なのかも謎ですが、競女ほど突き抜けていればそれはそれで話題になったんでしょうか。満遍なく低質ですが謎の光が大活躍するという点での価値はあるかもしれません。3

・ライフルイズビューティフル
射撃部をフィーチャーした美少女部活ものです。絵柄からかどこかニューゲームを思い出したりもしますが、展開も同様にやや淡々としていて退屈感が出ています。作中でも言っていますが競技自体が地味なのですが、大真面目な演出も地味さを強調しているように感じました。主要キャラがテンプレすぎて一番キャラが立っているのが先生な気がします。3

本好き
本好きの主人公が、本が一般的でなく羊皮紙を使っている中世風異世界に転生して、現代文明無双しながら本を作り上げようとします。幼少期からスタートして成長するのかと思ったらそのまま本編だったという。主人公を含め登場人物の年齢は+10才してもいいぐらいの話の内容に思えて顔と頭身のバランスも含めて違和感が全体に漂っています。
手段と目的が逆転している感があるのと、主人公のキャラが若干自己中心的で周りを振り回しておきながら、被害者オーラを出しているのが、この手のお約束とは言えなんだかなと。主人公以外の人が人格というよりも、話や見せたいシーンのシナリオのためにその場ごとに引き立て役や軋轢役や舞台装置のように振る舞っているようにも見えました。3

SAOアリシゼーション
何期目かわからない SAOですが、前半はやや退屈だったものの、後半に入って話が動き始めて面白くなってきました。が、主人公が車椅子に座ったまま1クール過ごしたのは、他のキャラに見せ場があった反面、全編に渡ってモヤモヤしていたようにも見えます。3.1

けものみち
異世界転生ものにひねりを加えたパターンです。ケモナーなレスラーが勇者として召喚されて魔獣を手懐けてペットショップを作るという流れで、序盤はギャグとしても面白さがあったのですが、回を増すごとに面白さが薄れて低空飛行になって行った印象です。というか、どうにもくどい部分があったりギャグなのか怪しい表現も気になったりします。3.1

・PSO2
まさかまたこのストーリーを、しかもアニメで見ることになるとは思いませんでした。引退者やまだ触れていない人に向けてというのもありそうですが、ゲーム自体10年運営だとしてすでに終盤戦ということを考えると、少々時期を逸している感もあります。基本はゲームないストーリーに準じながら、知っている人にとっては上手く状況や設定を補完し、アレンジも上手くできているように見えます。やや淡々としていたり、モブにやけに厳しいのが気になったりもしますが、悪くない出来に見えます。EP1〜3を2クールで見せるということなので、ダイジェスト感が出てそうな上、登場人物の多さもあって新規の人がどう見るかは気になるところですが、期待も込めて。3.2

星合
ソフトテニスの弱小校が転校生の加入をきっかけとして廃部の危機に立ち向かうというプロットからは、ソフトテニスが題材の青春スポーツものに見えますが、その実、青春ものの皮をかぶった社会派アニメです。話数が少ない中でのキャラ付けや立たせ方は課題だと思いますが、それを各々が抱える闇に焦点を当てる(というか役割を振る)という捻くれ方をしています。出てくる登場人物が皆闇を抱えており、大人が尽くクズだったりもして絶え間なく現代社会の抱える問題提起がなされ、テニスと並行してスッキリしないまま話が進んでいきます。視聴者にとってストレスフリーな作風が増えた現在にあって、異世界に逃げずに現実を直視しろというある種のアンチテーゼとも言えそうです。なので終始もやもやしながら見るような感じでしたが、12話時点で一応の目的は達成するものの、あの引きでは打ち切りのようだと話題にもなるのもしょうがないかなと。部活存続おめでとうで終わればまだ爽やかだったのでしょうが、このアニメは見る人にドロドロした現実を突きつけて何か波紋を起こそうとする社会派として、決して爽やかな終わり方をさせないのだという強い決意を感じました(2期予定があったのが無くなったからという話も・・・?)。とはいえ、重めながら最終話までそれなりに一貫性や目的への進行も破綻していないし、話としてまとまっていたと思います。ただ、やや説教臭くて各話ごとにメッセージありきで構成されていてすこし堅苦しいかなとも。3.2(綺麗に終われば3.5)

慎重勇者
これも異世界転生もののお約束をひねったパターンです。ギャグとしてのキレも良く作品を通しての緊張感もそれなりにあり、設定の面白さが生きていると思いました。ゴブリンスレイヤーと配役とスタッフが被っているようで全体的にまとまりよくできています。最近はヒロインに汚れをやらせるのも一部で流行っているようですかね。4

ヴィンランドサガ
後半です。安定していますが、全体的にフラグ回収が早く、18話で殿下が唐突すぎる覚醒で(作画も含めて)ジョジョ化した時はどうなんだろうかと思いつつ、その後の展開は面白くなりました。もう少し主人公の考えや成長が見られると盛り上がりそうですが、ここまででプロローグというだけあって、その先もあると考えると翻弄されるだけだったということが意味を持つのかもしれません。4

今季は現時点では序盤期待させて急降下系が多く、満遍なく低質なのも混じっているので、全体的に微妙な印象を受けました。好事家としては半端に微妙なのが多いのは豊作とは言いづらいなと。満を持して最後の最後にバビロンが空気と肩透かしが多かった日照りの秋季に収穫をもたらしたあたり、主役は遅れてやってくるというところでしょうか。
あと途中まで視聴したのはトクナナ、中病激発、Z/Xですが、最後まで見なくてもいいかなと思わないでもないです。

上にも下にも突き抜けたものを見たいのが人の性というもので、思わぬ掘り出し物に遭遇するのは評価が定まる前のリアルタイムならではの楽しみです。それに、過去を含めた色々なものと照らし合わせて、出来の良し悪しに対して客観的に見れると、微妙と括られるものの中にも良かった点や問題点/改善点が浮き彫りになり、そこに製作側やそれを取り巻く事情のようなものまで絡んでくると、アニメに対してだけではない示唆も得られるなと。とはいえもう少し見る時間を効率化したいとは思うのですが、途中から化けることもあるため、ある程度見ないと判断つかないのは難儀だなと。

こうして記録を残そうと思ったきっかけは、忘れやすいので記録として残しておこうと思っているのがまず一つ。また、普段感じている評価とプライムビデオなどの平均評価を見ると大方は揃っているので、そこまで偏った評価していないと思っていましたが、たまに自分の評価と明らかにズレるタイトルが時々あったのも気になったからです。自分の評価に偏りが生じる場合の条件を明らかにしたいと思うのと同時に、自分の趣向に対して法則性がなくズレることもあるため、意図的に下げられていたり、意図的に盛られていたりするのも見分けられるようになるんじゃないかなと思ったり思わなかったり。