mora quolitas

モーラ クオリタスというハイレゾ音質を売りにしたサービスが始まっています。遅ればせながら試したので感想を。

AmazonMusicHDとの比較と良いところ
よく言われることですが、同じ曲(椎名林檎のニュートンの林檎、MJ)で比較したところ、排他モードを使用してDACとアプリが直接やりとりできるのもあってか、確かにmora quolitasの方が心地良い音のように感じられます。割と乾いたイメージのHD700でも艶感が感じられるというか、突き抜けるような気持ちの良い個性は変わらずに、刺さりそうな音でもシャープにくっきりと解像して刺激が気持ちいいです。撫でつけたように滑らかでありながら情報量が多く、取り囲むように空間が広がる印象で、音の緊張感や生々しさも強調されて感じられます。マスタリング自体が違うのかアプリによるチューニングが違うのかアプコンが優秀なのかもしれませんが、後からAmazonMusicHDで聴くとやや荒く平たく聞こえます。正直CD音源以上の音質の違いを聞き分けられる自信はありませんが、味付けに違いがあるのは確かなようです。

気になる点
ただ、曲数が少ないです。少なすぎます。アーティストを検索してもまともにヒットしなかったり曲数がないので、雑食な人にとっては音質が下がって使いにくいながらも、曲自体は存在していて探せるAmazonMusicでいいかなと思わせてしまうのは脇が甘いなと。ロック系は割と昔のからややマイナーなものまでそれなりに充実している割に、電子音系はそうでもないようでジャンルによる曲数の偏りは大きそうです。あるいは、特定のジャンルに特化しているとか、音楽を聴くという体験自体に独自の方向性があれば、競合との差別化を図られて使う意義も出そうです。

UI関係は無難にできているとは思いますが、全体的にもっさりしています。バイオグラフィ的な物が見れたりするところはAmazonMusicにはないので、バックグラウンドやイメージが補完できるので良いなと。ただ、トップに表示されるアーティストの情報が真っ白だったり、どうも既存の配信サービスに付け足しの域を出ない感もあります。再生バーも、タイトル/アーティストだけでなく、発売日や作詞作曲などの表記をカスタムできる等は最低限あっても良いような。あと、これはmora qualitasに限ったことではないですが、アプリを立ち上げた状態で見える曲というのがおおよそおすすめと新着で埋められて、その奥に広がる膨大な曲へのアクセスが直接の名前の入力とそれに関連するおすすめに頼らざるを得ないのは、窮屈さを感じます。これはジャンル分けにも関連します。

ジャンルやアーティストの検索について
現状、操作も反応も表示も全体的にAmazonよりもさらに使いにくいアプリだなぁというのが実際です。特にジャンルに関してはAmazonのでもサブジャンルが適当というようなことを書きましたが、こちらはそれ以前の問題で、スタッフが音楽に詳しくないんじゃないかとか勘ぐってしまう出来というか、電子音系の分け方なんてジャンルですらありません。他のジャンルもサブジャンルが適当なようで、なんというか、サービスインした時点で骨格ぐらいはしっかり作ってあって欲しいのですが・・・。

しかも、ジャンルごとの楽曲は大抵新着や聴かせたい曲に偏っているため、ジャンルという入口からはもっとニュートラルに楽曲を聞かせて欲しいと他のアプリと共通で思います。例えばあるアーティストに興味が出て、調べたら特定のジャンルが分かります。そこから、同じ傾向のまだ聞いたことのないアーティストを探すのにジャンルを頼りに探していく訳ですが、ここで楽曲が偏っていたり、全く違うジャンルの曲だったり他のジャンルでも何度も出てくる楽曲だったりすると望んだ体験ができずにもやもやするか、その機能を使わなくなります。

また、AmazonMusicの方には気分ごとのプレイリストが(中身はともかく)作られていますが、Sony的にはWalkmanのUIとして登録曲から雰囲気に応じた曲を自動選別する機能が昔からあったのに、そういった技術が反映されていないのも勿体ないなと。個人的にはプレイリストを作るという作業が億劫でしょうがないので、半自動でできるとか、アーティスト単位のお気に入りとかジャンルで検索できるとかがあってもいいんじゃないかなと。

まとめ
現時点では限定したアーティストやハイレゾの新譜や一部の曲をお勧めされるままに聴く場合にのみ有益だと思われるので、音楽の体験としてはいいとは思うものの、定額を払い続けて得られるものを考えた時、継続はどうしようかなぁと。できれば国内サービスや企業を選びたいし、お試し期間が終わるまでに判断しようとは思うのですが、お布施したいわけでもないので、価格に見合った音源の拡充を期待したいところです。

色々な曲を聴くほど、自分の中ではHD700が覚醒したかのように相性が良くて(下手するとHD800Sと比べてもトータルでの気持ちよさが勝る音源が多い印象で)、悩ましいです。

以下駄文
せっかくSNSとリンクさせるのであれば、それぞれの曲やアーティストに関連する投稿や記事をピックアップできて、コミュニティの形成やトレンドを促進する意味合いも持たせるとか。音楽は同時代的な体験であるわけなので、年代やジャンルの一覧で見れるだけよりも、時代や音楽的な文脈で曲を見れるようになれる仕組みがあると、自分の知らない時代や分野の音楽に入って行きやすいのかなと。タグと年代で影響関係が可視化されたりしても面白そうです。タグらしきものはあるものの、曲数の問題かほぼ機能してません。

一時は音楽が時代性の一端を表していて、どこへ行っても同じような曲が流れていたりもしましたが、CDが廃れて以降は各々が好きな曲を聴いたり流す方向に流れた結果、音楽のトレンドというのは意図的な付加価値(アイドルやタイアップ)を持つもの以外いまいちあってないようなものに思えます。ここ最近になって、音楽ストリーミングが一般的になってきて、いわゆる「おすすめ」を様々なアプリで共通にすることでトレンドを作ろうとしている風潮はあるように感じます。

ただ、どうせあらゆる時代やジャンルが並行に並ぶ事ができる時代であるのなら、企画を積極的に行って新譜だけじゃなく、時代性やジャンルなどのパワープレイやお勧めによる音楽意識ジャックやフェス的なことをしても良いんではないかと思ったりもします。季節ものはそれに該当するのだろうとは思いますが、残していきたい空気感を表すことには賛成できるものの、どうも無難で定番なトレンドになっていたりして、もっと生活における音楽の割合を増やして、音楽リテラシーの上がるような物を期待してしまいます。というか、1月ほど継続しましたが、1月入ってもどころか月末でも新着にクリスマスソングを載せ続けるやる気のなさは物売るってレベルじゃないなと。