HD800S

沼に頭まで浸かってます。他のメーカーのハイエンドも検討したり、HD700の予備を購入しようか迷っていたりしたのですが、結局こうなりました。

概要

HD800Sはそれまで数万クラスが一般的なハイエンドだったヘッドホン界隈に2009年にゼンハイザーが送り出した10万越えのハイエンド機種HD800を引き継いで2016年に発売されたモデルです。HD800については以下引用。

10年以上の長い年月をかけて、満を持して登場したゼンハイザーヘッドホンの最高峰。ドイツのゼンハイザー本社で卓越した技術を持つマイスターによって作られ、組み立てられたメイド・イン・ジャーマニー。
HD 800 に採用されたリング状トランスデューサーの大きさは56mmと業界最大。豊かな音場感とクリアでナチュラルなサウンドを余すところなく表現します。
目標としたのは”パーフェクト”。ヘッドホンの歴史の新たな1ページを刻むヘッドホンの登場です。

音の傾向

HD800はその後のハイエンド機の基準になったとも言え、特にクラシックではリファレンス機として今でも愛好家も多い名機です。レビュー等で見る限り高音にピークがあり低音が少なめで音場がより広いというのが特徴のようですが、吸音材等が調整された800Sでは800のキャラクターを引き継ぎながら万能寄りに少しシフトしています。非常に滑らかで聞きやすく、ゼンハイザーのハイエンドはこういう方向かと納得できます。HD800Sの音自体は、意外かもしれませんがHD700と良く似ています。HD660Sに対しても700と音自体は似ているというようなことを書きましたが、あちらは例えとして残響の少ないソリッドさやストレートさを表すためでしたが、こちらは音全体の雰囲気や音色も含めて似ています。ゼンハイザーの上位機種特有の音というのでしょうか、くっきりとした輪郭を持ちながら歪みなく真っ直ぐで、上から下までスッキリした透明感のある明瞭な音を鳴らします(アンプはUD-505)。

56mmリング状トランスデューサーは40mmドライバ族よりも一回り落ち着いた余裕のある鳴らし方で、比べるとHD700でさえ浮ついて感じられます。具体的には残響成分が多く透明感やエッジを保ちながら滑らかに広がる解像感の高さを持ち、どんな音源も優雅に美しく鳴らします。特にクラシックはHD800系の得意分野なだけあって空間感や音の繊細さが素晴らしく、普段ほとんど聞かない自分でもクラシックが楽しくなるヘッドホンだと思いました。アイスランド系やアコースティック多目の穏やかなポストロックもHD700でもう少し広ければ・・・と思うところが広がるのも良いです。音場が広いと言われるヘッドホンですが、実際の広さ自体はHD700を一回り広げたぐらいの印象で、滑らかに広がる残響がより広さを強調しているように感じました。ポップやロックなども聞けますが、解像感高くリバーブが強調されて気持ち音が遠めからゆったり包み込むように鳴るので、良くも悪くもジャンルに対して音が美しすぎる感がしないでもないです。

アンプについてはこのクラスのヘッドホンを鳴らす場合10万以上のアンプで鳴らすことが多いと思いますが、相性というか好みで選ぶのが良さそうです。自分はUD-505直で聞いていますが、線が細めで繊細なややクールなアンプなので、ヘッドホン自体フラットで低音がやや少なめなのもあり、やや分析的で硬さがあり、人によってはハイ寄りと感じたり、温かみ(低音の厚みや柔らかさ)が欲しくなりそうです。自分も、すっきりくっきりの音で良いと思う反面、もう少しだけ低音に厚みが欲しいかなと思います(そう感じた時はHA-1A Mk2に繋いで聞いています)。因みにゼンハイザーの出しているアンプの傾向はウォーム寄りらしいので、メーカーの想定している音はアンプで厚みを補う方向のようです。なので、本機を使用している人はゼンハイザーやラックスマンやソニーあたりの低音厚めのアンプを使用している人が多そうな印象です。

他機種との比較

HD700を基準としてみると低音をやや減らし、高音をマイルドに高解像度にして、残響が強めで包み込むように音場を広くした感じです。言い換えるとそれ以外の部分は案外HD700でもHD800Sと近い音で聞けていたようで、改めてHD700は音自体の素性は良かったんだなと。低音の量はやや控えめながら鳴り方が近いので見た目も相まってHD700がミニ800Sに見えてきます(HD800とは個性に大きな違いがあったのだろうと思いますが)。HD700(onsoのバランスケーブル)の音はややドライで剥き出しの荒々しさはあるものの、高音までまっすぐシャープな印象で、音の消え方も残響が少なくソリッドで特徴的な高音のエッジもありキレがあります。アンビエント以外の電子音系やロック、HRHM、明快なポップはHD700の方が気軽かつ爽快なプレゼンテーションをしてくれます。因みにHD800Sの音の分離や立体感はアンバランスでも同程度以上あるので、この辺もランクの差と言うところでしょうか。まぁ先に800Sを持っていれば落ち着いたリスニングではおおよそ下位互換なので若干環境に対してデリケートでピーキーな700は不要ですが、激し目の曲をキレキレで聞いて気持ちよくなりたい時用に使い分けは出来そうです。

気付けばゼンハイザーの開放型の各ランクが揃ったのでHD599、HD660S、HD700、HD800Sと聞いてみると、HD660Sだけが異質な鳴り方をしている印象というか、音が近くもったりして透明感がありません。HD660SのレビューでたまにHD800Sが引き合いに出される事がありますが、対極とまでは言いませんがリスニングとモニターのように全く軸の違う音なのでどれだけアンプを変えても関係は覆らないと思われます。

高音量中音量低音量音場感音像感解像感分離感ヌケ感質感ドライバ
HD560SAB-B-B+A-BBA傾斜
HD599BBA-BBCCB傾斜
HD600BBBBB-BBB-並行
HD650BBBB+B-BBB並行
HD660SB-B+BB-BBBC-並行
HD700A-BB+A-AA-A-A-傾斜+
HD800SABBAAAAA傾斜+
ゼンハイザーの他のヘッドホンとの比較:相対的なものなので、必ずしも良し悪しというわけではなく用途に応じた使い分けができます。Bが標準的で、Aは演出的だったりやりすぎも含まれます。分かりにくいですが高中低がBBBがフラット、ABAはドンシャリとなります。

総合
560S:高寄りフラット、硬め、爽やか
599:中低寄り、硬め、メリハリあるがやや埋もれる
600:中低寄りフラット、ソフト、ニュートラル
650:中低寄りフラット、ソフト、リスニングより
660S:中低寄り、比較すると自分のは篭もる
700:弱ドンシャリ、硬め、中低音ウォーム、高音尖り
800S:高寄りフラット、硬め、音場広めでパキッとした鳴り方

600番台の録音や周波数応答の比較はこちら

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おわりに

同じ環境、音源で比較した場合、HD700を持っていると当初は思っていたより方向性が近く驚きが少なかったのも実際ですが、しみじみ聞いているとクリアですっと体に入ってくる音自体の素直さに加えて、音に包み込まれる体験はリッチでやはり価格相応なんだなと。また、開放型ヘッドホンの雄であるゼンハイザーのヘッドホンの到達点の一つ(820は置いておいて)なので持っておくことである種の基準が得られます。今にして思えば660を買わずに700を買っていたり、HD599を最初に買っていればそれはそれでアンプも妥協して数年過ごせただろうと思えたりもしますが、何だかんだ沼に浸かるのも良い経験になりました。(実はまだ2つ記事にしていないネタがあるのですが追々)

HD800S レビュー
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HD700 レビュー
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HD660S レビュー
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HD650 レビュー
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HD599、598、598CS レビュー
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Momentum3 レビュー
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