WF-1000XM4

本機は2021年6月25日に発売されたSONYのノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン最上位機種の最新モデルになります。前の型のWF-1000XM3はノイズキャンセリングTWSの火付け役ともいえ、それ以降の標準的な性能を示しつつもその約半年後に出たAirPodsProとともにBTNCイヤホンの牽引役となりました。その当時の全部のせでありながらトータルでのバランスが良かったものの、流石に2年の間に全体の水準も上がりやや古くなっていました。そんなところに大幅アップデートで次の世代もまたリードしていきそうな最新版が出たということになります。思っていたよりも良かったので届いて3日時点で記事にしましたが、随時更新していこうと思います。

最初に結論を書いておくと、AndoroidまたはXperiaを使っているならまずおすすめできるモデルです。iPhoneだとまだAirPodsProのほうが使いやすいかもしれませんが、バッテリー持ちも良く、ケースもそれなりに小さく、ノイズキャンセリングも強いのでヘッドホンのWH-1000XM4と同様に普段遣いの道具として優秀です。そして十分な音質を持っていてトータルのバランスは現状最強と言って差し支えないと思います。

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イヤピースと音の感想

標準イヤピースがコンプライのようなウレタン素材となりました。XM3の時にコンプライを買って試していたのですが、遮音性はたしかに上がるものの気持ちヌケが良くなく、耳がこすれるのと圧迫される感覚と使い捨ての間隔が短いのもあって標準のシリコンに戻していました。XM4の標準イヤピースは耐久性がどの程度化はわかりませんが、遮音性は高そうです。ただ自分はウレタン系の感触があまり好きでないので、今はMTW2の時に買って一時期使っていたスパイラルドット++をつけています。その他ディープマウントというのも買っていましたが、期待した音にならなかったのと装着感が固く耳が痛くなるのでこちらは使っていません。→その後日常的に使っていますが、耳に突っ込んでる感はあるものの遮音性的に標準のイヤピースに戻しました(耐久性の確認も兼ねてヘタるまで使ってみようと思います)。

音源はAmazonMusicHDでXperia1IIにLDAC接続で聞いています。
音のバランスとしては低音がやや多めです。高音はそれほど主張もありませんが、中音も割合明瞭に聞けます。低音は厚く野太い感じというか、やや緩めで包み込むように面で鳴ります。
初期イヤピースだと若干音が近く、密度の高い音ながら一瞬モヤッとしているように感じますがつけている間に気にならなくなります。鳴らし込む間に多少音が締まったり印象は変わるかもしれませんが、XM3ではBrightを基準に少しマイルドにしたEQを使っていたので、気持ち高音に刺激がもう少し欲しくもなります。とはいえ、EQを使わなくても良いかなと思える充実感と明瞭さの両立した鳴らし方に感じます(イヤピース変えたのもありそうですが)。

現時点でエッジ感はそれほどないものの音像は小さくはなく質感自体はXM3に通じる硬さを感じさせます。自分の所持している中だとイヤホンよりもBTヘッドホンに近い艶を感じる鳴り方をします。低音が豊かでエネルギッシュな鳴り方をするので、ヘッドホンで例えるとWH-1000XM4というよりはMOMENTUM3の低音と高音を少し控えめにしたような雰囲気を持っています。
音場は比較的音が近めで見通しが良いというよりは密度が高く迫力を感じさせます。音自体は滑らかさを感じさせるので、もう一声エッジ感や空間の広さや個別の音がバラけるような分離感も欲しくもなりますが、手軽に出先でも聞けるのを思えばTWSの進化を感じます。XM3のシンプルで明快な鳴り方も悪くないですが、音の密度が向上しているのがわかります。

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他機種との比較、NC

TWSというかイヤホンの場合イヤピースの影響が大きく出そうです。他のイヤピースの後に改めて標準のウレタンをつけると確かに遮音性に優れているのがわかります。その意味で、アクティブとパッシブのバランスはSONYなりの落としどころとしてこのチョイスなのだろうかなと思います。ただ、どれだけNCが進化したところで現状ではヘッドホンのWHでもほかのNCイヤホンでも完全に無音になることはありません。少しでも電車の走行音などの騒音を低減して音楽を聴きやすくするかというところに重きがあり、各社音質とNCと聞かせ方でせめぎあっているというか、単に遮音したいだけなら耳栓をするのが良いと思います。

XM3との比較
XM3は低音をタイトに点で鳴らすのと元気のある音が好みでしたが(それを痩せていると表現する人もいますが)、比較するとXM4はLDACとDSEEの強化で音質の向上を図っていることに加えて、低音も高音も充実感のある音を鳴らすためXM3以上に良い音を鳴らします。
NCはまんべんなく効きが強くなるし、ケースが小さくなったのとバッテリー持ちが良くなったのもあって、EQである程度似た方向性の音も作れそうなので乗り換えで良いかなと思います。

AirPodsProとの比較
AirPodsProのNCは久しぶりに電車で使うと意外とこんなものだったかな?と思うこともあり、XM4のほうが強いと感じます。音としてもやや淡白な鳴り方な上、音を追おうとすると埋もれがちというかざらざらした鳴り方に思えて、自分としては普段Andoroidを使っているのもあり、バッテリー持ちも含めてAirPodsProの出番は減りそうです。
とはいえ、NCも悪くなく装着のしやすさと外音取り込みの聞きやすさは依然としてAirPodsProが優れています(これはこれでオーパーツです)ので、iPhoneユーザーには依然お勧めに違いはありません。
個人的には使いやすい道具だと思う反面、長時間使っていると確実にポロッと落ちるし、使っていると思ったよりも早くポンポコ音が鳴るので使用頻度が上がらなかったりはします。

MomentumTrueWireless2との比較
MTW2も情報量の多い音を鳴らしますが、EQを使わないとモヤッとしているのもあり、純粋な音質では同等かXM4のほうが良い音と感じる人も多そうです。ただ、鳴らし込んだMTW2は空間が広く音の響き方も自然でナチュラルな空気感を持つのは唯一さがありそうです。生楽器やしっとりした曲はMTW2も良いですが、現代的な曲やノリの良い曲を聞くのであればXM4のほうが力強く勢い良く鳴らします。この辺は好みといえそうですが。
発売後外での普段遣いのメインとして使っていましたが、アクティブNCはあまり効きが強くなく、バッテリー持ちもAptXで実質4時間程度と道具としての使いやすさで一歩譲る感があります。操作関係のカスタマイズは非常に使いやすくて、ケースも含めた質感も良いんですけどね。

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気になる点

提灯記事を書きたいわけではないのですが、モノが良いのでこれまで良い面ばかりを書いてきていましたが、気になっていることもいくつか。

・ケースが華奢
サイズとのトレードオフではあるのですが、XM3のときのしっかりした作りからするとプラが薄く少し華奢で組付けも少し不安になります。本体も若干取り出しにくく、蓋の固定に少し遊びがあるのが気になります。本体には関係ないですが。

・装着時に固定できているかよくわからない。
イヤピースがコンプライのようなウレタン素材になりぐにょぐにょしているのもありますが、耳につけるときに定位置にきちんとついているか若干不安になります。グイグイ押し込んでいますが、金属色のパーツに力がかかるのは大丈夫なんだろうかとも気になります。

・外音コントロールでアナウンスのあとに切り替わるのが鬱陶しい
XM3から引き続きですが、タッチ後にアナウンスが入ってから切り替わるので反応が鈍くもっさりして感じられます。とりあえずアナウンスオフにしましたが、レスポンスはXM3よりは向上してるものの全体的にサクサク感がないというか。

・タッチのカスタマイズをもっと自由にさせてほしい
これもMTW2ではかなり自由に機能を左右のタップと長押しに割り振れましたが、SONYのTWSは大雑把にしか設定ができないので実質カスタムできるようでできない(せいぜい左右入れ替える程度)のが気になります。

・外音取り込みはもう一回り音量を上げてほしい。
自然さはあるものの微妙なこもり感というかイヤホン越し感が残ります。ヘッドホンのXM4でも感じましたが、このあたりはアップルの圧勝です。MTW2は音量はいいものの、鍵束などの金属音が激しく強調されることがあるので難しい技術なんだろうとは思いますが…

・たまに謎の挙動をすることがある
NCだけつけて音を消しているときに一瞬外音取り込みのような挙動をすることが時々あります。これ以外にも細かいバグのようなものはありそうですが、些細なことなのでその内アプデで修正されると思います。

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まとめ

個人的には、EQをいじらない状態でも手持ちのどのTWSイヤホンよりも充実感があってヘッドホンに近い音を鳴らすと感じます。
TWSは星の数ありますが、自分はできるだけ小さく、できるだけ長持ちして、できるだけ音がよくできるだけNCの強いものという点で選びたいと思っています。その意味でXM4は現時点でトータルでのバランスが非常に高く、これから夏が近づく季節にも普段遣いで活躍しそうです。

とはいえ、TWSに初めて触れる人にとって装着感に癖があり耐久性も低めのウレタンイヤピースを標準にしたのは、少し冒険だったのではないかなというのも正直な感想です。物自体がよくできているのは間違いないだけに、遮音性と装着感にダイレクトに関わるだけに、(4代目なので)買い替えを想定しているだろうとはいえ、静音性をアピールすることが先行した結果、リスクを軽く見ている感が無きにしも非ずというか。NC付きのBTイヤホンというのはすそ野が広く今やニッチな商品ではないものの、話題になって初めて手にする人も多いでしょうし、合わなかったらイヤピースを自分で買ってねというのは少々投げっぱなしにも見えます(本体の価格を考えるとなおさら)。それを思えば、パッシブの効きが多少甘くともXM3のように標準でシリコンイヤピースも付属しておけば余計な突込みを受けずに済んだかもしれません。