続・続・けものフレンズ2とケムリクサ

感想です。

いやしかし、色々とぶん投げて終わりましたねけもの2。謎を残すとか続くかどうとか以前に決まった枠で起承転結をつけて着地するのが作品な訳で、これは明らかにクソアニメ的な畳めずにぶん投げたエンドです。何と言うか、基本的にはひたすらテンポの悪い茶番(それも見てて痛い感じの)と虚無が続き、何がしたいのか分からないまま話数を重ねて、ラストに残したものを放り投げていい話風にまとめる様はある種の清々しさすら覚えます。最後に決定打を放ってくる辺りやはり魔物は最後に潜んでいるものです。
さらに1期のファンの感情を逆なでするような要素をこれでもかと詰め込んでいます。
人の業がテーマとも言われていましたが、結局のところ放映時期をケムリにぶつけたのも含めて1期アニメを全否定する、というのが2期のコンセプトだったようです。1期の主人公は冴えないキャラに改変された挙句、ラストにダメ押しとして世代交代劇を入れて2期組みの旅はまだまだ続くよ的に描かれます。さらに追い討ちとして1期よりも昔のアプリ時代に猫2匹は2期主人公には会っていて、前世も現世も3人はズッ友描写で締めって。最終評価を自分がつけるなら5段階で2、続編として見たら0.5です(1期は4.4ぐらい)。何だかんだ言っても主人公組以外でかわいいキャラやよかった瞬間もあったので。あと、犬好きは見てはいけないアニメですね。

 

悪意?偶然?1期に対する2期のスタンス
結果的に、けものフレンズ2というアニメはクソアニメというだけでなく、1期の続編として見た場合胸糞アニメとしてもかなりのクオリティを誇ることになりました。2期のあらゆる要素が1期を否定または上書きするために作られているように見え、ある意味で1期やIPを巻き込んで採算度返しの自爆テロをかました形になっています。細かい描写は省きますが、全体のつくりは雑なのに、キャラクターの性格の変化やボスの扱いや会話の端々、沈められた遊園地など、着実に1期否定要素を複線のように積み上げて行き、ラストで一気に真意を明確化させる、これは1期やケムリのカタルシスとは逆のショックを生み出しました。1期の劣化コピーや茶番を楽しそうにやっていたことなども1期自体を貶めるためにやっていたように見えてくるのは逆に関心してしまいます。(何と言おうと出来はあくまでクソアニメですが)

2期は1期とは対照的に徹頭徹尾没入できないアニメでした。キャラの描写も世界感の描写もどれをとっても雑で整合性がとれていないため、丁寧に作られた1の世界の延長として見ている視聴者にとっては、茶番も含めてすぐに現実に戻される作りになっています。キャラクターに感情移入できない上に、行動の理由と目的も曖昧で偶然に頼って流されるように展開するため、主人公が何をしたいのかも不明瞭で共感を生みにくくなっています。結局のところ主人公キュルルが一貫して信念を持った行動をとり、このキャラはカバンの後継として愛せると思わせていれば、主人公の交代も納得はいかなくてももう少し受け入れられたでしょう。(まぁサーバルが同一固体だったり、カバン自身に敗北宣言させるような扱いや最後に既成事実のマウント取りをやらせる脚本ではどうしようもないですが。というかそもそもカバンを出す必要なかっただろうと)

 

IPの質と場外パフォーマンス
当然ながら放映後炎上となりました(一部の人は心を折られたり意気消沈していますが)。それに対し(おそらく)製作側はメディアを使って上から世論誘導で消化しようとしていますがどうなることやら。下手すると事実陳列含めた草の根活動も取り締まりかねないのも不穏です。(まぁネトゲと違って出したものはそのまま残ってしまうし、実物を見れば微妙なのは分かるので強引な火消しや叩き返しはかえって疑惑や印象の悪化を招きかねないですが)
やさしい世界が好きな人なのになんで攻撃的なのか?という疑問をツイで絡まれたPが言っていましたが、そういう言葉遊びをして問題に向き合わないからダメなんだろうと。誰もが普段からやさしい世界に住んでいるわけじゃないし、厳しい現実と向き合ってる訳です。1期に触れていた間の癒しが心地良かったというだけのことであって、癒されに来た娯楽で殺伐を見せ付けられたら穏やかでいられるはずもなく。例えるならかわいい動物の動画チャンネルを登録していたはずなのに急に虐待動画のチャンネルに変わっていたら話が違うとなる訳で。そもそも、やさしい言動をすることとやさしい作品を好むことがイコールじゃないのぐらい小学生でも分かる理屈です。何れにしても、2期の全体を通した作風や12話の展開は天然でやっていたにせよ、分かってやっていたにせよ、製作スタッフ(主に全体の指示を出した人とOKを出した人と脚本)は人の心の機微というものが理解できない、共感できない病気なのではないかと疑ってしまいます。

PやらDやらが前線でヘイトを稼いで好き放題やった挙句出てきたコンテンツを私物化して炎上って、どこかの「2」とダブりまくりです。これはそちらでも書いたことですが、制作側にとっては飯の種、ノルマをこなすだけのお仕事かもしれませんが、受け手にとってはかけがえのない娯楽な訳です。クリエイターの中には作品を作品として情熱をもって作る人がいる一方、ルーチンワークだったり金儲けだけのために作っているように見える人もいて、今回の件はこの辺も明暗が分かれていて面白い事例でした。自分達がどんなコンテンツを創って何を伝えようとして、それがどう伝わったのか分かってないと、意図せず人の意思が一方向に向かってしまい悪循環を経て炎上したり、気付けばサーっと波が引くように人がいなくなってしまいます。一度失った信用と言うのはそうそう回復するものではないので、炎上商法というのは知名度のないコンテンツがメジャーになるのには失うものが少ない分プラスに働きそうですが、既に確立されたコンテンツが炎上してプラスに働いた例なんてそうそうないんじゃないでしょうか。アンチ・ファンダッタージとか事実陳列罪とかけもの系の動画でも見かけましたし(ボクラガソンは見ませんでしたが)、これって本当PSO2だけに限った話じゃないんですよね。

さて、3でセガはどう出るか・・・。

 

因みにケムリクサは・・・
12話はきれいに着地しました。ちょっと戦闘が長かったり粗かったりしたかなとは思いますし、もう少し滑空して飛距離伸ばすかな?と思わせながらすとんと落ちた感があり、やや物足りないのは否めませんでしたが、それもこれも11話の衝撃と期待の裏返しでしょう。緑ちゃんがなければ即死だった!が繰り返されたのも含めてもう一ひねり欲しかったですが、物語中の複線はほぼ回収し、残る謎も作品内の要素で補完がほぼ出来そう(自分の中で落としどころを見つけて見返すとこのバランスでいいと思える)な辺り想像の余地も含めてさじ加減は絶妙だと思います。自分が評価をつけるなら4.2ぐらいでしょうか。構成は非情によく出来ているし、キャラも動いてみれば魅力的です。印象の地味さと世界の閉塞感も人を選ぶ感じはしますし、制作体制の制限故かもしれませんが、個人的には退廃的で閉塞感のある世界感もミニマルな展開もマイナスだとは思いません。(Lainとか灰羽連盟とかTEXNOLYZEとか・・・って全部キャラデザ一緒か。あと映画のCUBEとかも好きですし)メジャー作品と比べれば小ぢんまりして見えますが、人物、世界感の作りこみや物語のギミック、視聴者に問いかけなどが上手く絡み合って大鑑巨砲主義の大作とは別ベクトルの非常に尖ったクオリティを持つというか。
ただ、物語の性質上リリが無念の中で消えてしまったのが強調された形になったのは、シルエットだけでなくもう少しだけ救いが感じられるラストの余韻がほしかったというか、その辺まで詰められていれば名作と呼べたかなと。何ならゲーム的な作風でもあるし、ノーマルエンド、トゥルーエンドのように違った結末が見れるともっといいかなぁとも。

追記です(4/4)。12.1話!これはまた色々と考えてしまうと言うか、期待してしまいます。トゥルーエンドに向かうならBD買います。けもの1期の時もそうでしたが、ネタも労力も出し惜しまないサービス精神すごすぎですというか、監督の手の平の上か!
さらに追記。因みに自分がケムリが面白くなりそうだと感じたのは4話ラストのヌシ戦がゲームのボスっぽい挙動(3発レーザー撃って歩いて3発みたいな)をしていたのに対し、わかばが攻略法を見出して勝利した所で(ただこの時点ではまだけもの2との差は決定的にはならず)、確実視したのは5話で橙を開いた時です。謎が満載の作風では有力なヒントやその世界の真理の一端の開示はやはり一気に引き込まれます。そういえば書き忘れていましたが、ケムリクサの複線散りばめつつラストで回収ショックと余韻を残しつつ着地という展開を見ていて、ファンタジックチルドレンという作品を思い出していました。この作品も、絵柄は正直キャッチーではないし前半ケムリクサの倍ぐらい話が動いて見えない(でも実は伏線を張りながら動いている)ので当時途中切りされやすく話題にならなかったタイトルでしたが、後半の怒涛の展開や命や人の本質のようなものがテーマな事や絵面よりも脚本で見せる点も含めて、色々共通点がある作品だと思いました(非常に完成度が高いことも)。ケムリクサがいけて、もう少し重めでも大丈夫な人には強くお勧めです。

 

最後に
けものとケムリを取り巻くさまざまな出来事や、出来上がった作品、それぞれに対する反応諸々。それらは多くの問題提起を、それも比較可能な分かりやすい形で残したように思います。製作体制に関する問題、放映メディア(視聴形態)とSNSの問題、関係者とSNSの問題、視聴者とSNSの問題、二次創作三次創作の問題、等々・・・。特に作品の内容に関する考察が多かった1期やケムリに対し、2期は脚本や何故上手くいかなかったか、など広い範囲での考察が進み、それが1期やケムリやその他の作品にも波及したという意味で、アニメ作品と視聴者との関係が1段階シフトした(視聴のスタンスがシフトしたともいえます)ように見えたのは意義深かったと思います。
2期は内容はもとより某アンケートなどを受けて名実共に平成最後のクソアニメ等と呼ばれたりもしますが、この作品にまつわるあれやこれやは、増えすぎたアニメの反動としても捉えられたりするGUN道(同時期の比較対象はハルヒ)のように風化せずに残るのではないかなと思います。
追記ですが(4/20時点)、放映終了後けもの界隈では、場外で燃料投下が止まらず15日には公式HPで謝罪文を出すまでの騒動になっています。その後もぼちぼち燃え続けているようで。自爆テロとか書きましたが、実際IP自体危うくなってるような・・・。焼け野原になってしまったのであれば、いっそ次にアニメにするときには全くまっさらな状態から始めるといいのかもしれませんね。妄想ですが、幾原監督辺りがけものキャラを自由に動かしたら、たつき監督とは全く違うけど可愛さと毒が交じり合いつつ考察しがいのあるうような、案外相性がいいIPなんじゃないかなと思ったりもします。それかいっそ作家性の強い人達にまる投げのオムニバスとか。まあ現状を見るにIP自体眠らせたほうがいい気もしますが、類似品が取って代わる未来も無きにしも非ずですし、この周辺は今後も目が離せません。

2019冬、終わってみればエガオ、バーチャル、けもふれ2、他にも超低空飛行がいくつか見られて、クソアニメ的には豊作でした。いつぞやのラノベ4銃士だったか言ってた時期を思い出します。バーチャルは結局見る気が起きなかったので、自分的には今期はエガオとけものフレンズ2の2つです。1つに絞らなきゃいけないルールなんてなかったぜ~(エガオも数年に1作レベルだったと思うので)
相対的な参考として、今期だと風強4.4、モブどろろJOJOは4.3、ケムリかぐや様4.2、猫えんどろ4、相撲3.8、荒野、五等分3.2、SAOあすかウィズリヴィジョンブギー3、禁書2.8、エガオ2.4、けもの2(バーチャル2)あたりですかね。今期は脚本や場外方面で極めてテクニカルな話題が多かったシーズンだったように思います。
こちらも追記。その後バーチャル全話見ました。アニメというよりはバラエティのようで評価がしにくい作品ですが、印象は変わりません。というか若干の変化はありつつも基本的に1話と同じフォーマットが延々と続きます。完全にファン向けに割り切った作品ですが、もう少しコンテンツの特異性とか12回使えることを生かした試みが見たかったかなあと。