竜とそばかすの姫とか

雑記です。アニメ関係の話です。

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珍しくアニメ映画を見てきたので感想を。
テーマ曲の「U」が非常に印象的で、予告編や開始30分ぐらいまではワクワクしたというか、あとから思えばこの映画の映像的に美味しいシーンは出し惜しみなく予告編に全て入っている感じもしました。
本編はサマーウォーズ+美女と野獣+星合÷3といった印象でした。

内容についてはぼかしながら書きますが、以下ネタバレを含みます。
細田監督の作品は有名でありながら、実は最近初めてまとめて見ました(未来のミライはまだ未見)。それぞれの作品の中にはテーマ性がしっかりありつつも考察せずとも一見のエンターテイメントとしても楽しませる印象でした。ツッコミどころやご都合展開はあるものの。

今回の映画はシナリオなのか構成なのか、いまいち人物が彫り下がらないというか、社会派的ノルマをこなしたような印象で、投げかけはそれぞれあるものの、どうもそれぞれの要素がストーリーとしてうまく噛み合っていない感じがします。前半の学校パートと後半の身バレパートがいまいち分離してるというか全体的に散らかって見えます。

竜の正体も謎にしたいのかそうでないのか、視聴者的には早い段階から目星がつくような見せ方の割に物語の前半には大して絡んでも来ず、パッと出てきた感が強いです。そうしたスポットライトの当て方は幼馴染や父親の役割にも似たようなことが言えて、シナリオの都合上の台詞回しのための配役に見えて、出番と出番の間でそのキャラが生きている感じがしないというか、そもそも生きたキャラなのが主人公と相棒的なメガネキャラぐらいに思えてしまって、どうにも感情移入がしにくく結果的にエンタメとして何も残らなさにつながるのかなと。それならいっそ青い方向に突き抜けて、主人公と幼馴染にフォーカスして、幼馴染と竜の少年の設定を合体させて、主人公と幼馴染を対照化しながら過去と学園生活と仮想世界を掘り下げた方がシンプルで筋が通ったんじゃないかなと思わないでもないです。ありきたりだとしても。

竜と心を通わせてダンスやクライマックスの幼馴染の一言が後押し、その後身バレで歌うまでの流れも真面目なシーンや泣けるシーン?なのになんだか茶番感が出てるように見えたのはうがった見方でしょうか。サマーウォーズのように終盤皆で力をあわせて反撃開始というシーンもテンポが良すぎてうん?うん?あれ?東京行くの?一人で?バスで?しかも行ってからひとりでも特定力すごい!?しかも彼らはタイミングよく家から出てさまよってるの?と熱い展開というより内容に集中させないツッコミ待ちが逆に清々しくもあります。

そういう構成もあってか、他作品ではサマーウォーズの青春や家族、おおかみ子どもの母親も、バケモノの子の父親もその作品として心に残る要素や訴えかけがストレートに伝わってくるところがあったのが、竜と姫ではどこか回りくどさを覚えてしまいます。現代の社会で「本当の自分」とか「自分に自信を持つ」とか「他人に優しくするとは」といったこと言いたいのかなというのは伝わってきますが、衣の多い海老天のような感覚にもなります(これはこの作品に限らず)。
確かに起きた事象や話を追っていけばリアルとバーチャルということも、SNSを日常的に使う学園生活も、母親が事故で亡くなった(これもツッコミどころしかない気もしますが、その後の子どもへ与える影響というメッセージは強いと思います)あとの父と娘の距離感とか、児童虐待とか、社会的なテーマが散りばめられていて考えさせる要素に違いはないとは思います。ただ、それらをつなげるもっと強い流れやテーマ性が薄いので散漫として感じられてしまったのかも知れません。
とはいえ、視聴後レビューを流し見していた時見た、ジャスティンが虐待親なのではという考察はたしかに見方が1段階深まって面白いなと思います。リアル対峙での恐れようの説明にもなりますし。単に、主人公の胆力とか、リアルで少女に怪我させたことに気づいてやっちまったと我に返って逃げたのかもしれないですが。

なんだかんだ書いてきましたが、「U」を歌っているときの主人公もシーンは和製では珍しい表現のようでいて、MilleniumParadeのPVのようでもいてチームラボのような情報量の多いオブジェクトの表現が絵としても美しく印象的でした。映像美としてはサマーウォーズのような仮想空間のワチャワチャした見せ方やダイナミックなカメラアングルのシーンではやはり3DCGでないとできない表現だなぁなどと思ったりもします。
あと、テーマ曲をはじめとして音楽は良かったです。
ストーリーや面白さはさておいても、映像と音楽だけでも見る価値はあるんじゃないかとは思いました(クソゲーを褒めるときの常套句のようだ)。

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そういえば、アニメつながりでいうと、昨年はコロナに重なってリアルが忙しくて、ろくにシリーズ物を見れていないのですが、去年見て印象に残った2作品について書いていきます。

・エクスアーム
令和初期の話題作として大物が現れたので、つい一気観してしまいました。2020から2021年現時点までの話題作は色々あったと思いますが、ここ1年で唯一通しで見たTVシリーズだったりします。(どういう見方…)
アニメーションって、作画や中割がどうこうといわれることもあり、過剰なツッコミはどうかとは思いますが、やっぱり見た目も大事だよなというのを再確認する作品でした。まるで個人がMMDで作ったかのようなモデリングとモーションと編集で、自主制作アニメだったらこれでもいい評価になったかもしれないのですが、商業作品として作ってこの出来は素敵です。原作は面白いらしいですが、実際話自体は気になる点はあるものの引き込まれるものはありますし、続きが見たくなります。こうした話題も影響あってか、原作が打ち切りという話も目にしました。制作ガチャとはよく言われますがこんな形で原作にフィードバックされると真顔になってしまいます。
カメラワークは独特なものがあります。スタッフがアニメ関係じゃないという話も見ましたが、アニメのカット割りというよりもワンショットが多用されて、実写ムービーやゲームのムービーのようでもあります。
3Dと2Dの共演があったり、解像度を無視して荒れるの上等で拡大したり、キャラが真顔だったり変なところで笑顔だったり口パクしなかったり、エフェクトが浮いていたりやけに煙が濃い時があったりでツッコミどころしかなくてじわじわきます。

おすすめや良作は人によって何を好むかによって差が出ると思いますが、糞は必然というかなるべくしてその評価なのでおおよそ誰が見ても苦痛だったり微妙だったりします。なぜ糞と言われるのか、ネタとしてみてしまうのか面白いなと思ってしまいます。
凡作佳作の評価は世の中に色々な人が色々な意見で真面目に語ってると思うので、正直自分的には割とどうでも良かったりします。ぶっちゃければ綺麗にまとまったものを面白いと言ったり、数の暴力で勝ち馬に乗ってもああそうだねというか。それよりも、何か突っ込みどころがあっても強烈な輝きを持って尖っていたり、否定的な意見を言われるものに愛おしさを感じます。もちろん、逆張りをしてこじれた主張たいというわけではないし、良いものは良い、ダメなものはダメなのは当然としてある前提ですが。

・プロメア
今回見た竜と姫で感じた若干の残念感で思い出しました。炎炎と似たような時期に似たようなことをやっていて少し話題だった気もします。
キルラキルなどと共通する破天荒でキレのある表現で、これぞトリガーという作品を作ろうとしたのはわかりますが、ちょっと空回り気味だったかなとも思いました。何回似たような展開で同じ主題歌流すんだろうとか、腕組みしすぎじゃない?とか、トリガーらしさを濃縮してヘビーローテーションしてるかのような感覚になります。よく動き原色を多用した色も綺麗ですが、自由なカメラワークで派手に動かすとちょっとチカチカするかなとかくどいかなという印象もあります。アニメーションという映像表現としての体験としては満足感はありますが、内容は微妙にありがちというか、記憶に残りにくいというか。エクスアームの対局にある動きの意味でのアニメーション全振りの作品に思いました。