AirPods Max

Appleのワイヤレスハイエンドヘッドホンとして発売されたAirPods Maxですが、無事届いて1ヶ月聞いてきましたのでレビューしていきたいと思います。発売日を過ぎた頃ヨドバシの購入後のステータス画面で延期が知らされ、その後音沙汰がなかったので昨年内には届かないとも思って、キャンセルしてAmazonに変えようかと思いましたが、年末に届きました。

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仕様

再生時間は20時間で接続はLightning、重さは380グラム。操作は物理キーが2つあり、一つはリューズ的な回転によるボリュームと、押しこみ回数で再生操作ができます。もう一つはノイキャンと外音取り込みの切り替えボタンです。タッチ操作ではないことは個人的には良いと思いました(人によると思いますが)。
その重さがネックになると懸念していましたが、ヘッドバンドが幅広で負荷を分散する作りのため装着感もよく思ったよりも重さが気になりません。
とはいえ、頭にずっしり来ることに違いはないので、HD800やT1などを普段から使っていればそれほど気にならない程度ではありますが、2時間以上長時間装着していると側圧のためか、こめかみ周辺が少し痛くなります。
長さを無段階調整できるヘッドバンドの両サイドは昔のiMacを思わせるクロム調で角度調整も自由度があるため、うまく調整できれば長時間でも疲れないポイントを見つけられるかもしれません。

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音の感想

自分の印象としては手持ちのヘッドホンで言うとHD650の空間を気持ちスッキリさせつつ固くして、艶感としっとり感を高め、低音に密閉型のような量感をもたせたような感じが一番近いと思えるというか、リケーブルしてアンプに繋いだHD650を目指すか参考にして音作りをしているかのようにも感じます。言い換えると刺激やキレは控えめのややウェットな音です(丁寧に慣らしているようで、聞きこむほど音一つ一つがリバーブで包まれているような不思議な鳴り方にも感じます)。
空間表現もHD650同様にゆったり広がる音場を持ち、しっとりと聞かせるタイプというか、派手さはないもののいつまでも聞いていたいと思えるタイプの音です。それぞれなっている音は明瞭で、硬すぎず緩すぎずそれなりに一つ一つの音を拾っていける感覚があります。気持ち低音が出ていますが、謳い文句通りバランスとしてはモニター的というかリファレンス的な誇張のない表現と言えそうです。
その上でしっかりとしたノイキャンと外音取り込みがついています。音漏れするという話もあるので、外につけて出るかは迷いどころではありますが、位置づけとしてはMOMENTUM3と同様に部屋や静かめのカフェやラウンジなどの屋内など落ち着いて音楽を聞ける環境が合っているのではないかと思います。
まだ着けたまま外に出ていないので、電車などでの接続やノイキャン具合も追々見ていこうと思います。

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他の機種との比較

SonyのWH-1000XM4と比較
ややブーミーでどこか淡々となっている印象のXM4と比較すると、聞いていて解像感も情感もあり、自分はAirpodMaxのほうが好みだし音も良く感じます。価格も半額までは行かないものの3万台というのもあって、比較すると純粋な音ではランクが違う感覚があります。が、これはこれで軽さやバッテリー持ちやノイキャンと音漏れのバランスなど道具として特化しているので通勤・出張用としての使いやすさはXM4に軍配が上がりそうです。

SennheiserのMOMENTUM3と比較
低音がブーストされてやや硬さのある高音などやや派手な味付けは現代的なPopsやRockやMetalでは楽しいですが、どちらかと言うと個人的には音の鳴り方はAirPods Maxのほうが好みです。ややメロウなPopsや生音を聞かせるタイプの音が染みる感じがします。密度の高い音に埋もれたいとか、激しい曲で気持ちを上げて音楽を楽しみたいときにはMOMENTUM3が合っているというか使い分けでしょうか。

SennheiserのHD650と比較
引き合いに出した往年の名機でもある有線ヘッドホンですが、比較するとHD650のほうが音の輪郭をつかみやすく、手前と奥の音の関係が近くいろいろな音を拾いやすい事もあってかやや音が乾いて感じられます。AirPods Maxのほうが手前と奥に差をつけてあるように聞こえるというか、ボーカルが独立して聞きやすい印象で、オケ部分が主張しすぎないように若干マイルドというか。アタックが柔らかいものの音そのものはソリッド感のある硬さがあります。
音の解像感、立体感や分離感はアンプやケーブルでの調整もできるHD650のほうがあるようにも思いますが、デジタル処理の恩恵もあってか、音作りの個性の違いのようにも思えます。ただ、HD650を完全に期待すると聞こえる音が聞こえにくくなったとか、張りがありながらやや眠い音と感じるかもしれません。聴き比べると似てるようで違うのですが、何故かイメージの中のHD650が出てくる感覚があります。

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気になる点

毎日ではなく時々使うようになって気づきましたが、ネットで言われているように自然放電が早いです。いざ使おうと思ったときにバッテリーがほとんどないということがたびたび起こります。家にいるときは大抵有線ヘッドホンをアンプにつないで使っているし、外では気を使わずに使いやすいXM4を使いがちなので、部屋用の無線ヘッドホンは使っていると便利ではあるものの、音も思えば使用頻度は下がります。同様にたまにしか使わない木綿3は放電もしないし、たたむと電源オフなので結局のところ道具としての使い勝手はこちらの方が上に感じてしまいます。(一応iMacの接続を使わないときに切ることで急な放電は回避できているようですが、それでも気づけばバッテリーが徐々に減ってはいるので、一定時間使わないと電源オフにしてほしいです)

そういえば、こちらも時々の使用のiPhoneSEも見るたびにバッテリーが切れているので、Apple製品は普段から常用していないと使いにくいですね。自分は好きな方ではあるし買う方ですが、信者ではないので微妙なところは微妙だと思います。

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おわりに

自分の感想としては、HD650を彷彿とさせる音を場所を問わず無線で使用できるというのは魅力的です。BTヘッドホンの音質としても最高峰と言っても差し支えないと思います。とはいえ、約7万=ZenDac+HD650を買ってお釣りが来る(HD660Sでもいけそう)ぐらいの価格に見合っているかというと、3万円台以下の音質+ノイキャンや空間オーディオやその他特殊なテクノロジーとなると妥当な値段かもしれませんが、世間的にはヘッドホンの価格としてはかなり強気ではないかなと感じます。個人的には同じくモニターライクななり方という話のAONIC50と比較してみたい気もしています(去年Amazonのセールで一時安かったときに迷って買わなかった)。
あるいは、有線ヘッドホンとは若干ジャンルが異なる面もあるため、沼に浸からないで済みそうなのは良い面…なんでしょうか。その内各社が10万近いハイエンドBTヘッドホンを出してきそうな予感もしますが…

無線としては音の印象はいいものの、バッテリーの自然放電や、特徴的で保護力のないケース(放電を避けるためにケースに入れるとか面倒くさい)、価格や作り的に扱いにも若干気を使う、など、道具としての完成度はもうひとつかなという印象です。これ以外使わないと割り切れるなら使いやすいのだろうとは思いますが…。

余談ですが、3万台の音質と書きましたが、その後SR325eを出してきてスマホ直結で聞いていたら、目が覚めるような表現力のある音でちょっと言い過ぎたかなとも思いました。HD599よりは上だとは言えます。ついでに、やや非力ですがスッキリした鳴り方のPHA-2AにHD650でYAXIとClearforce(バランス)を使って聞くと、自分の中でHD650に似ているイメージとして引っかかっていたものが思い出されてこれこれと思いました(わかりにくい)。